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学校全体でのお取り組み事例

文学作品の読みを深めるために国語辞典を使用されている事例

2012年9月取材

武蔵野市立第二中学校 杉田あゆみ先生の授業実践

●学校概要
東京都武蔵野市(人口約13.9万人)の中学校。
生徒数は各学年約100名で、学級数は各学年3学級。
●お取り組み学年
1年生(国語辞典)
●お取り組み単元
辞書を活用して登場人物や場面についての読みを深めよう
「大人になれなかった弟たちに・・・・・・」(光村1年教科書)
●指導者
杉田 あゆみ 先生


杉田 あゆみ 先生

実践の概要

「大人になれなかった弟たちに・・・・・・」を教材とする。
辞書を引き、多様な語句の、文脈上ふさわしい意味を考えることによって文章中の登場人物の気持ちや場面の様子等を深く読みとっていく。

単元は、全3時間で、「辞書を活用して登場人物や場面についての読みを深めよう」

第1時 本文を読む。登場人物や場面について自分の考えを書く。
第2時 母親の登場する場面を辞書を引きながら読む。辞書でキーワードになることばを調べ作品中のことばに置き換えて考える。(辞典活用)
第3時 自分の意見を述べ合い交流する。

という学習の流れで、第2時で辞書を活用する。

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第2時の展開

<指導案>で詳細を見る

【導入】
「国語世論調査」 結果についての新聞記事を紹介。「すごい~」「がっつり」「半端ない」といった身近なことばを取り上げ、意味や使い方の変遷について興味を喚起する。
【展開】
  • 本時の、下記のねらいを確認する
    ・辞書でことばの意味を調べ、その結果、作品についての理解を深める。
    ・鑑賞において、自分の考えの根拠にあたるところを、辞書で調べる。
  • 前時に確認したキーセンテンスを見直す。
    「そのときの顔を、僕は今でも忘れません。強い顔でした。でも悲しい悲しい顔でした。僕はあんなに美しい顔を見たことはありません。僕たち子供を必死で守ってくれる母の顔は、美しいです。僕はあのときのことを思うと、いつも胸がいっぱいになります。」
  • このときのお母さんの様子がどんなだったか自分の意見をまとめる。そのときに、状態を表す次の3語に着目する。
    「強い」「悲しい」「美しい」

    「強い」
    辞典(今回は『ベネッセ新修国語辞典』を使用)を引き、①~⑥の語義のどれが当たるか、自分の意見を述べる。その際、必ず理由を述べる。
    ⇒「④精神的にしっかりしている」「③たえる力が大きい」等の意見が出る。

    「悲しい」
    辞典の表現コラム(表現べんり帳)を活用し、「悲しむ」のページで類語を確認し、どのような様子か、理由を添えて自分の意見を述べる。
    ⇒「泣き崩れるほど」「胸が潰れるような」「悲哀」といった意見が出る。

    「美しい」
    コラムを参考にして、言いかえた「きれい」の類語も確認し、どのような様子か、自分の意見を述べる。その際、必ず理由を述べる。
    ⇒「潔さを美しいと表現した」「純粋な様子」などの意見が出る
  • ワークシートを使って、意味調べをした後に、それぞれの登場人物についての理解がどのように変化したかをまとめる。
    キーセンテンス①~⑦の中で、傍線の語について各自辞書で意味調べを行う。
    その際、辞書の複数語義の中から適切なものを選び、また、語義の丸移しではなく、文脈に合うように変化させて本文内で置き換える。

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授業実践後の手ごたえ

■文脈を考えながらの辞書引きが読みを深めた

文学作品の中のことばは作者が熟考し選んだもので、作者の深い思いが込められている。そのことばを、辞書を使って文脈上の意味を考えながら読むことで、作品の主題や登場人物の気持ちなどに迫ることができると考えられる。ここでは意味調べのワークシートを活用し、作品の中に使われていることばの意味を辞書で調べ、文中の意味に置き換えさせた。意味調べを通してそのことばの多様な意味や微妙な語感の違いなどを考えながら作品を読み進めることができた。また主題や登場人物の気持ちを考える根拠を見つけることができた。

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授業実践を終えての課題

■どのことばを選んで調べさせるかが大切

意味を調べる際に作品のどのことばに注目するかはじっくりと検討する必要がある。調べることばはその作品にとって重要で意味のあるものでなくてはならない。また辞書を使った意味調べがその作品を考えるきっかけとならなければならない。ここで使用する辞書は類義語が整理されているものであることが望ましい。
授業展開に即してどのような辞書を使うことが適切か考えていくことが大切である。

■作品も吟味して選択を

また教材とする文学作品も吟味する必要がある。ことばにこだわりがあり、一つのことばから様々な場面や気持ちが想像できる作品がふさわしい。文学作品として質の高いものが求められる。

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今後の展望

今回の学習で「意味調べ」という活動が文学作品を深く読み取るうえでとても役に立つことが分かった。丁寧な意味調べの活動が作品理解の上でとても重要ではあるが、国語の授業の中では通り一遍な「意味調べ」となり生徒が一般的な語意を理解するだけで終わってしまう。作者が吟味して使っていることばを意識させながら読むことで、作品の世界に深く入っていくことができ、一つ一つのことばの奥深さをじかに感じることができる。作品の主題に迫ることばを指導者が意識して選び、そのことばを使った背景や意図を考えさせることや、辞書がことばの語意をどのように定義しているのか、また文例がどのようなものなのかを事前に確認して生徒に調べさせることは、主体的な読みにつながっていく。

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生徒アンケートより、授業の感想の抜粋

  • 同じことばでも意味がたくさんあってびっくりしました。これからはたくさん辞典を使い、知識をたくさん増やしたいと思います。
  • ことばは、一つでたくさん意味があるので、そういう時には、国語辞典はべんりだと思います。
  • 意外に辞書でことばを探すのが得意なのかなぁと思った。
  • いろんなことを習っていろんなことばを学んだ。『ひもじかった』など知らなかった。これからも活用していきたい。
  • 少し、知らないことばを知れてよかった。文学を学ぶときに、ことばを知らないと、損すると思った。
  • 国語辞典を使ったことで、様々なことばの意味が知れたので、良かった。普段知らないことばは読みとばしてしまうので、ちゃんと調べて意味を知ろうと思いました。

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授業見学レポート(辞典編集部より)

国語世論調査結果ニュースを導入で紹介することにより、「ことばの意味というものは多様で変化するものである」ということを生徒が最初に理解した上で授業に臨んでいました。
意味調べを、「辞書を引いて意味を書き写す」という単なる作業ではなく、文脈に合うように必要な語義を選択し、辞書の記述を変化させて本文のことばと置き換えていく知的活動として意欲的に取り組んでいる姿が印象的でした。
母の気持ちについての考察においては、「強い」「悲しい」「美しい」という非常に意味の幅広いことばをキーワードとし、辞典の類語辞典的なコラム部分も使いながら、生徒たちが的確に読みを深めていくようすが見られました。

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今回の授業事例について


田中 洋一 先生
東京女子体育大学教授

言葉の意味調べは国語の授業で多く行われますが、説明的な文章と文学的な文章ではその活動の密度が異なります。文学的な文章における作品中の言葉は、作者によって十分吟味された上で使われていますから、意味はもちろんですが、語感や意味合いも大切なのです。杉田先生の事例は作品のなかで生きている言葉について考えさせるすぐれた事例です。この活動によって、生徒は作家の言葉に対する愛着を感じることができるでしょう。