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学校全体でのお取り組み事例

説明文の授業で国語辞典を活用されている事例

2012年9月取材

東京都多摩市立聖ヶ丘中学校 鈴木太郎先生の授業実践

●学校概要
東京都多摩市(人口約14.6万人)の中学校。
生徒数は各学年約80名で、学級数は各学年3学級。
(ただし、2012年度は3年生は2学級)
●お取り組み学年
1年生(国語辞典)
●お取り組み単元
シカの落ち穂拾い(光村1年教科書)
●指導者
鈴木 太郎 先生


鈴木 太郎 先生

実践の概要

説明文に使われている写真や図表をフリップにして、小学校中学年を聞き手に想定し、内容を分かりやすく説明する、という活動。
説明文の場合、抽象的な概念を表すことばの使用や漢語表現が多くなるが、それを、小学生でも理解できる和語に直す過程で辞典を活用させ、理解を深めるというねらいである。
図表を用いた説明文は今回の新教科書の目玉でもあるので、それを使って実践を試みた。

単元は、全4時間で、「読むこと」の授業。

第1時 教材文の要点をワークシートにまとめる
第2時 説明するためのことばを選択する(辞書活用)
第3時 説明原稿を作成して検討する
第4時 発表会で相互評価する

という学習の流れで、第2時で辞書を活用する。

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第2時の概要

<指導案>で詳細を見る

小学校中学年の児童が聞き手であることを前提に、教材文の写真や図表を説明することばを考え選ぶのが本時の目標である。
第2時は、以下の通り展開する。

【冒頭5分】
通常行っている漢字学習や小テストを実施(5分程度)。
【導入10分】
教材文の写真や図表を説明する語句を選ぶ方法を理解する。
【展開30分】
教材文の写真や図表を説明する語句を選ぶ。
⇒ここで 辞書を活用する。
【まとめ5分】
今回の学習の振り返りと、次回の学習を予告する。

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授業実践後の手ごたえ

■目的を明確にすることで、生徒が意欲的に取り組めた

今回の学習は「小学校中学年の生徒に対して説明文の内容を説明するため」という目的に沿った国語辞典の活用を仕組んだ。目的がはっきりした活動だったため、意味調べに対して生徒は意欲的に取り組んでいた。
辞典で意味を調べた後も、「この言い方で小学校3・4年生が分かるかなぁ」とグループで相談したり、指導者に質問したりする生徒が多く、「国語辞典の意味を写して終わり」という活動に比べると、一つの語句からさまざまな思考を広げる学習になったようだ。

■単調な意味調べに終わらせず、辞書の記述を「検討する」学習ができた

「国語辞典の意味を写して終わり」という学習課題だと、複数の意味が掲載されている語句の意味を検討せずに、最初の意味のみを写したり、複数の意味をそのまま丸写ししたりする生徒が多い。しかし今回は、小学校中学年に説明するのにふさわしい語句を選ぶ必要があったため、グループで語句の意味をしっかり検討する姿が見られた。

■説明のわかりやすい辞書を使うことも重要

「実践で使用する辞書は、解説が中学生にも分かりやすい平易な語句で書かれているものが適切である。生徒が意味調べで苦痛を感じてしまう原因の一つに、「調べたのに意味が分からない=何のために辞書を引くのか分からない」ということがある。そのような苦痛の原因が少なくなる辞書を指導者が生徒に使わせることで生徒の学習意欲を向上させられると分かった。

■生徒の書いた原稿にはさまざまな工夫が見られた

難解な漢語などの表現を分かりやすい和語に直して説明してある原稿が多く見られた。また、語句だけでなく、教材文の「修飾関係が複雑で難解な文」を分かりやすい短文に分解して理解しやすいように工夫してある原稿もあった。
ほとんどの生徒が、単に語句だけを書きかえるのではなく、内容が分かりやすくなるように工夫してある原稿を書いていた。

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授業実践を終えての課題

■「表現力」に自信のない生徒へのフォローが必要

難解な語句の意味を調べ、その語句を易しく言いかえながら説明文の内容を説明するという学習は、「表現力」に自信のない生徒にとってはやや難易度の高い学習になったようだ。図や表を説明するための基本的な技能(特徴的な部分に着目する、ナンバリングやラべリングを使用して説明する、全体から細部へ説明する…など)の習得に特化した授業を本実践の前に行っておくことで、そのような「表現力」に自信のない生徒でも取り組みやすい学習になったのではないか。単元の構成や順序を工夫して指導していくことが必要だと感じた。

■グループ活動の進め方は比較検討の余地がある

本実践では、作品全体を通して難解だと思われる語句の意味を生徒全員がグループ活動で調べた。しかし、最初からグループごとに担当する写真や図・表を決めておき、自分達が担当する部分に関する語句だけを調べて、発表するという学習活動も想定できる。このような活動にしたほうが、生徒にとっては本当に必要なことだけを目的に沿って学習することになる。どちらの学習活動のほうが、生徒の意欲を引き出し、力をつけることができるのか、今後、比較対照しながら、検証していく必要性を感じた。

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今後の展望

■「読む必然性」を持たせて、意欲的な学習活動へ

今回のように、「読みとった内容をもとに発信する」という学習活動は、「読む必然性」を生徒も自覚できるので生徒が意欲的に学習に取り組むことが分かった。今後も、このような活動を設定することで、「目的や必要に応じて要約したり要旨をとらえたりする力」をつけていく学習活動を展開していきたい。

■語句を理解させる指導の工夫として、辞書を使った表現活動を

中学生が説明文の理解でつまずく原因は主に二つあると私は考えている。一つ目は、論理展開が明快になっていないこと。二つ目は、使用されている語句を理解するための知識や体験を中学生が身に付けていないこと、である。論理展開を中学生に理解させるための手立ては、今までたくさんの研究等で工夫されてきたが、語句の理解については、単なる意味調べや指導者による解説で済まされることが多かった。
しかし、今回のように、国語辞典を活用した学習活動を設定することで、説明文中の語句から生徒が主体的に思考を広げていくことが可能である。語句を理解させる指導の工夫の一つとして、今回のような「国語辞典を活用して生徒が主体的に表現する活動」を、他の教材でも工夫して実践していきたい。

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生徒アンケートより、授業の感想の抜粋

  • 昔は、調べるのなんてめんどくさいと思っていたけど、調べると自分のためにもなるし、今度からもっと使うようにしたいと思いました。
  • 国語辞典を使えば、低学年の人とかに難しい言葉でも、簡単に分かりやすく説明できるので、とても便利だと思う。
  • 言葉を易しくするのが難かしかったです。
  • 意味を調べるために使うことが多かったのでこれからも使うきかいを増してほしい。
  • 国語辞典は中学校に入るまでは、『辞書めっこ』(※)の時しか使わなかったけど、考えて使うと、いろいろな言葉がわかりおもしろい。
  • 一つの単語を、ほり進め考える楽しさをしった。

※テレビ東京の「ピラメキーノ」という番組の中でのコーナー。『広辞苑』を開き、そのページで1番おもしろいと思う単語を発して、リコーダーをくわえた相手を笑わせる遊び。

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授業見学レポート(辞典編集部より)


辞書に貼ったふせんの枚数に応じて辞書活用証明書を発行している

鈴木先生はふだんから生徒に辞書を持たせ、引かせているとのことで、生徒の辞書を引く手つきも慣れていました。
「このことば、小学3年生にわかるかな?」「わからないよ!」と、グループで相談しながらことばの難易を判断している生徒の姿は真剣そのもので、単に辞書を引いてことばの意味を確認するだけでなく、その説明が他者にわかるかどうかに頭を悩ませることを楽しんでいるようにも見えました。
辞書を引きながら「思考する」という、ワンステップ踏み込んだ学習活動がここには確実にあり、普段の授業における、新しい辞書活用のご提案をいただいたと感じました。

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今回の授業事例について


田中 洋一 先生
東京女子体育大学教授

中学校では、授業時間数が少ないため、辞書を使った語句の意味調べは、宿題にしたり授業中に短時間で行ったりすることが多いようです。しかし、この事例は、語句の意味を調べる活動を学習の主役にしているところに価値があります。語句の意味調べを、相手意識をもった表現能力の育成に直接つなげているのです。生徒は一つ一つの語句のもつ意味の厚みに気づき、使用する語句の選択に神経を使うようなるでしょう。個人、グループ、全体での学習の組み合わせも見事だと思います。