Multi Book授業実践レポート

教室にマルチブックがやってきた



愛知県小牧市立味岡中学校

愛知県小牧市立味岡中学校

新制中学になり、今年で50周年。生徒数565人、クラス数16の中規模校。 コンピュータの導入は7年前。Windows95は今年の夏に導入。コンピュータ教室には生徒用に40台、先生用に1台のパソコンがあり、先生用にはプロジェクターが接続されている。主に技術家庭、美術で使われているようで、他の科目はこれからというところらしい。

「中学校地理」

〜作った野菜を売ってできるだけ利益を上げる工夫をしよう!

促成栽培と通常栽培、いつ、どこに売る?〜
使用した教材:マルチブック 中学校地理・野菜出荷シミュレーション『野菜はいかが』 <1997年取材>

<1日目(第1章)>

農家になって野菜を売ろう!

作った野菜を売って利益を上げる工夫をしよう

先生は、本日のテーマが書いてある紙を貼りながら説明を始めた。
「今日は、みんな農家の人になって、野菜を売ってもらいます。しかも、4人で売ってもらいます。でも、精根こめて作ったんだから、少しでも高く売りたいですよね。で、売る野菜は同じ野菜ですが、どんな野菜がいいかな?」
子どもたちは、今日やろうとしていることがまだよく理解できないのか、声が出てこない。先生は、2人ほど指名した。
「ネギ」
「トマト」
「じゃ、ネギトマトを売ることにしましょう。生産する量は誰も同じで、300トンとします。売る先は3つの都市とします」
と、キーワードの書かれた紙を1枚ずつ張っていった。
4人で売る
同じ野菜
300t生産
3つの都市

そして、また新たな紙を貼り出しながら、
「どこの都市に売るか、というのが問題ですが、昨年度の値段はこのようになっています」

昨年度の野菜の価格
 A市 90円  B市 80円  C市 85円

その他に、画面や授業開始前に配られたプリントには、各都市での昨年度の販売実績と、周辺地域からの今年度の出荷量がグラフで示されている。また、昨年度の売価や生産コストなどが数字で提示されている。
「どこに売りたい?」
と先生は問いかけた。基本的に、利益を上げるためには、売価が高く需要量も多いA市だろう。先生は、ここで4人を指名すると、
「A市」  「A市」  「C市」  「A市」
という答えが返ってきた。

パソコンでシミュレーション

「では、これをパソコンで実際にやってみましょう」
先生はプロジェクタのついたパソコンを使って、先生の画面を大きく映しながら説明を始めた。
 1、2、4番はA市に300、3番はC市に300と入力し、画面上の「出荷」ボタンをクリックした。すると、各都市に出荷された量がグラフとなって表れ、売上げや利益が表示された。3番以外は369万円の利益で、3番は510万円の利益だ。
「この違いは、なんだろう?」
と問いかける。子どもたちにとっては、なかなか難しい質問だ。子どもたちは考え込んでいる。指名された子どもは、
「他の人たちがC市に出荷してなかったから」
と答えたが、まだ多くの子どもは実感できていないようだ。ここで、先生は、
「3番の人もA市に出荷したらどうなるだろう?」
と問いかけた。そして、実際に3番を「A市に300」と入れ直した。
「あっ」
と、小さな声ではあるが、ちょっとざわめく。多くの子どもたちが「今日何をするのか」がわかったようだ。なにせ1番から4番までの利益が、みんなマイナス45万円になってしまったのだから。「どこに売るかによって、まったく利益が違ってくる」ということを実感できたようだ。
「どうして、こうなったのだろう」
という先生の問いに、
「同じ市にみんな大量に出荷したから、売れ残りとかがあって利益が減った」
「何が変わったのかな?」
という問いには、
「去年は売価が90円だったけど、今年は売れ残ったから66.5円になった」
ここまで来れば、もう今日の授業は半分、成功したといってよい。

自分で出荷してみる

「利益を上げるにはどうしたらいいか、自分でパソコンを使って考えてみましょう。何分要りますか? ・・・じゃあ、5分」
ということで、子どもたちにソフトを自由に操作させる時間を5分間与えた。さっそく子どもたちは、2人1組でいろいろと数値を打ち込み始めた。
A、B、Cに100トンずつ入れてみる子どもや、全部B市に出荷して、すごいマイナス利益を出す子ども。教室内は多少ざわめいている。それぞれの結果に、一喜一憂しているようだ。子どもたちは問題をきちんと把握して、いろいろなことを考えているのが見えてくる。
5分間の自由な操作が終わった。先生は、あらかじめ机間指導中にチェックしていた子どもを指名して、
「作るときに、水とか肥料とかのお金を使ってるから、出荷しないとマイナス2040万円になった」
「B市に300トンを入れると、出荷量が去年より多くなるから損をする」
といった発言を引き出し、コストや需要といった概念を意識させた。

四人で利益を競う

 さて、ここからが本題だ。今度は、4人で1組となって、それぞれが300トンをA、B、C市に好きな量だけ分けて出荷するのだ。お互いに相談することなく、自分だけの考えで各市への出荷量を決める。そのため、他の3人の出荷量によっても、自分の利益が左右されることになる。決めた出荷量は、用意されていた出荷用紙に書き込む。それを後から全員がまとめて入力し「誰がいちばん利益が上がったか」を競うという、一種のゲーム感覚的な作業である。
子どもたちは、実に生き生きとして楽しそうに出荷量を決めている。そして出荷すると、喜びの声や拍手が各所で起こる。利益の上がった子どもたちなのだろう。
 続けて2回目だ。それぞれ「いかに利益を上げるか」をいろいろ考え、出荷量を決めていく。子どもたちは「もう夢中」といった感じだ。他の3人の動向によって、自分の利益が大きく左右されるので、単純にいかないところがおもしろいらしい。中には「もうこれで億万長者だ」と自分の利益を確信している子どももいた。
 さて2回目の出荷だ。やはり歓声があがる。思惑通りいった者、そうでなかった者、入り乱れての歓声である。
「1回目の借金返せたよ」
といった声も聞こえてくる。
<子どもの出荷例>(出荷量の単位:トン 利益の単位:万円)

1回目 2回目

A市 B市 C市 利益 A市 B市 C市 利益
1 0 100 200 -449 150 50 100 629
2 0 100 200 -449 90 70 140 400
3 100 75 125 632 150 100 50 506
4 70 160 70 185 150 65 65 435
 最後に「気づいたこと・わかったこと」「どうなったときに利益が上がったのか」をプリントに書かせた。これらを見れば、子どもたちはいろいろと考えていたことが十分うかがえる。そして、そのうち何人かに発表させると、
「昨年より少ない都市に、出荷した量が多いと儲かる」
「昨年より全部の出荷量が少ないとき儲かった」
「昨年の出荷量と近いときに儲かる」
と、かなり利益を上げるコツはつかんだようだ。ここで、第1時間目は終了となった。
気づいたこと、わかったこと
自分が思ったように出荷しても、なかなか利益が上がらず、難しいと思った。
昨年の売れ高を越すと"赤字"!
人の心理も読まなければいけないとは思わなかった。
1つの市に集中すると、その市に売った人がマイナスになる。
少しだけ出荷量をずらしただけなのに、大きく利益の違いが出た。
どうなった時に、利益が上がるのか?
人が出荷してない所に出荷すれば値段が高くなる。
昨年売れた量と同じくらいなら利益が上がるが、それより多いと赤字になる。
みんなが同じ場所に偏り過ぎないようにすると、いっぱい利益が上がる。
昨年売れた量より全出荷量が少ない時。
値段が高いA市にたくさん出荷した時、みんながあまり出荷してない時。

2日目(第2章)へ続く

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