Multi Book授業実践レポート

教室にマルチブックがやってきた

愛知県小牧市立光ヶ丘小学校
愛知県小牧市立光ヶ丘小学校

全校児童1081人。 31クラスをかかえる大規模校だ。コンピュータ教室には、Windows95対応のコンピュータが21台設置されておりネットワークでつながっている。低学年には1週間に1回、高学年は2週間に1回の割合で授業にコンピュータを活用している。


「小学校2年生学活」

〜あれっ、こんな絵が描けたよ

絵を描く遊びを通して、説明文を理解する〜

使用した教材:マルチブック小学校2年学活・説明文の理解と表現『おえかきゲーム』 <1997年取材>

こんな電車が描けたよ

広々としたコンピュータ教室に、子どもたちの明るい声が響きわたる。子どもたちは2人で1台のコンピュータに向かっている。先生の合図で、マルチブックを立ち上げ、今日の授業で使う『おえかきゲーム』のブックを開くまでの操作を難なくこなしている。このクラスでマルチブックを使うのは、今日が3回目だ。
「それでは第1章の、2ページ目を開いてください」
準備ができたところで先生が指示を出した。前の時間に1ページ目の問題を終えている子どもたちは、説明されるまでもなく何をすればよいのかがわかっている様子で、待ってましたとばかりに取りかかる。
「まずはじめに よこにながい大きなながしかくをかこう」
コンピュータのロボットが読み上げる。
この教材は、ロボットが絵を描く手順を文章と音声で説明していく。「おえかき」ツールを使って、コンピュータの説明にそった絵を描くのが課題だ。子どもたちは最後まで、いったい何が描けるのだろうとワクワクしながらロボットの指示を理解しているようだ。
「できたー」
「電車だ」
しばらくすると、教室のあちこちからうれしそうな声があがった。先生は、画像転送装置を使ってひとりの子どもが描いた絵を正面の大きなスクリーンに写し出した。
「ぼくのと同じだ」
うれしそうな声があがった。子どもたちは前の時間に、同じコンピュータの説明にしたがって描いた絵でも、友だちと微妙に形が違ってくることを確認している。コンピュータの説明をどう理解したか、それが友だちと同じだったことがうれしいのだ。

コンピュータが子どもの表現する道具になった

「先生、できたから写してー」
「めちゃくちゃいいのできたよ」
子どもたちは、自分の作品を紹介してほしくてたまらない様子だ。友だちの作品がスクリーンに写し出されるたびに、教室に拍手が起こった。
「ぼくは、色をくふうしました」
ひとりの男の子が、描いた絵に色をつけた作品を発表した。
前の時間に「おえかき」ツールで絵を描く練習をした子どもたちは、誰に指示されたわけでもなく、自由に画面に色をつけてお絵かきを楽しんでいたのだ。
「飛行船」
「ピンポーン」
ようやく正解が出た。もうひとりの女の子からの出題が続く。
「紙のまん中に、長細い下向きの三角をかいてください」
今度は少し慎重だ。
「三角の上に、2つのお山をかいてください」
教室のうしろのほうから「ネコかな?」という声が聞こえてきた。どうやらここで、2つの山を横に並べて描いた子どもと、上に重ねて描いた子どもに分かれたようだ。女の子が続ける。
「三角の中にしましまをかいてください」
「最後に、2つの山に雪をかいてください。何ができましたか」
女の子の説明が終わると、次々に「はい、はーい」と手があがった。

私の描いた絵をあててください

「次は自分が用意した絵を、となりの人に説明して描いてもらいます」
作品の発表が一段落したところで、先生が次の課題を説明した。今度は、自分が描いた絵を相手にことばで正しく伝える練習だ。しばらく友だち同士でやりとりが続いた後、クラス全体でやってみることになった。ひとりの女の子が前に出て、自分が描いた絵の手順を説明しはじめた。
「まず、紙の上の方に横長のまるをかいてください」
かんたん、かんたんといった雰囲気が教室に広がった。女の子が続ける。
「横長のまるの右に、四角をくっつけてかいてください」
どんな四角を描いたらいいのか、すこし戸惑った様子だ。
「次に、横長のまるの下に、たて線を4本くっつけてかいてください」
いったい何ができるのだろうと子どもたち。
「最後に、たて線の下に横長の四角を全部の線にくっつけてかいてください。何ができましたか」
絵の説明が終わると同時に、子どもたちからさまざまな答えが返ってきた。
「フライパン」
「ちがいます」
「道路」
「ブー」
「ブラックホール」
「ブー」
なかなか正解が出てこない。子どもたちの画面には実にさまざまな形の絵が描かれている。説明文を書くことがいかに難しいかを実感するところだが、子どもたちはなぞなぞクイズでもやっているかのような感覚で、あっけらかんと明るい。
「ソフトクリーム」
「ちがいます」
「アイスクリームです」
「ふつうのアイスクリームではありません」
「2段重ねのトッピングアイスクリーム」
「正解です」
ここで終了のチャイムが鳴った。
「とても上手に発表できましたね。次の時間は、コンピュータの画面に絵が出てくるので、その絵を見て説明する文を書いてもらいます」と先生。
「楽しくできた人?」
先生の問いかけに、「はい!」と元気よく全員の手があがった。子どもたちはしっかりと表現することの喜びを味わっている。遊び感覚で自然に説明文を理解したり、表現したりする力が身につけられる。そんな実感があった。

授 業 を 終 え て


増田喜代三教諭へのインタービュー


「コンピュータでなければできないことを、子どもにさせてやりたいですね」コンピュータが進化しても、先生の基本的な考えは変わっていない。子どもたちが自分の思想の道具としてコンピュータを使っていけるようになることが先生の夢でもあり目標でもある。

Q1 子どもたちの発想が実にユニークな授業でしたね。

A1 そうですね。予想外の絵を描いたり、絵に色をつけたりと、思いもかけない子どもたちの発想がありました。コンピュータがネットワークでつながっているので、順次にみんなに見せたり、ある子どもの絵を取り込んで、全員に提示することができたことが授業を活性化させたと思います。

Q2 今日の授業で工夫された点などをお聞かせいただけますか。

A2 マルチブックに付属している授業展開事例では、コンピュータの指示にしたがって絵を描くといった作業の後に、用意されている絵を使って説明文を書く練習がありますが、今日の授業をやった子どもたちはまだ文字の入力に慣れていないので、自分で描いた絵を発表させて、みんなに描かせるというステップを取り入れてみました。

Q3 なぞなぞクイズでもやっているような感覚で楽しんでいましたね。

A3 そういった遊びを通して、子どもたちは自然に理解力や表現力を身につけていきます。 教師が教えなくても、子ども同士で教え合うといったことも、共同学習でなければできないとても大切なことだと思っています。

Q4 子どもたちはとても上手にコンピュータを操作していましたが、どのくらい練習をしているんですか。

A4 今日が3回目ですが、その前にマルチブックの基本操作を1時間、マウスを使った描画練習を1時間おこなっています。子どもたちはマウスなどのコンピュータの操作に慣れるのがとても早いです。一度操作をしっかり押さえてしまえば、あとはスムーズに進めることができます。

「子どもたちの豊かな発想を、教師は大切にしていかなければならないし、また、それを楽しまなければならないと思うんです」と語る増田先生は、コンピュータを使ったこれからの授業展開が楽しみでたまらない様子だ。

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