| Multi Book授業実践レポート
教室にマルチブックがやってきた
| 千葉県佐倉市立佐倉東小学校 全校児童459名、各学年2〜3学級の学校。コンピュータ教育は本年4月からの新しい取り組み。Windows95が動作するコンピュータが21台。可動性を考慮してLANはピアトゥーピア接続で利用。プロジェクター、デジタルビデオ、スキャナー、カラープリンタ有。校長先生が非常に熱心で、各学級に週1時間を割り当て、コンピュータ担当の先生を中心に学年別・月別の活用計画を立案するなど、意欲的に取り組んでいる。
|
|
「小学校4年生国語」
〜情報活用能力を育てることから着手する国語教材の利用
文末表現を使い分けながら、キーボード入力による文章表現力を高める〜
◆実践日 1998年6月17日(水)
◆学級の人数 27名(男12名、女15名)
利用したソフト:
マルチブック小学校4年[国語]
『文章をチェックしよう』
 |
|
文末の表現に常体と敬体、時制の不統一が混在する文章を読みながら、どこがおかしいか修正して文章を入力するソフト。
|
●本時の位置づけ
作文・表現学習は特に力を入れている分野です。常体と敬体の使い分けは、なかでも重要事項として4年生で徹底させるべく3時間を充てており、本時はその3時間目です。●本時の目標
文字情報を自在に正しく表現できることは、国語教育のみならず情報教育の観点からも大変意義深いものです。年間活用計画の中で、6月は「キーボードによる簡単な文章表現」をテーマにしており、正しく文字入力することを目標の中心に据えました。
●コンピュータ活用の目的・意図
国語は文字入力と最も密接に関わる教科です。キーボード操作をおもしろがり始めた子どもたちの知的好奇心を刺激する意味でもメリットがあると考えました。
|
問題文を読んでおかしいところを見つけよう <導
入・15分>
- コンピュータ教室に入ってきた子どもたちは、2人ひと組でコンピュータの前に着席した。
「それでは、CD-ROMが配ってありますから、ブックセンターから『文章をチェックしよう』を持ってきて、第1章の3ページを開いてください」
先生からの指示にしたがって、子どもたちは慣れた手付きでマウスを操作していく。
「開いた人から、まん中に集まってください」
子どもたちが画面を開いている間に、先生はプロジェクターを準備する。
「はい、こっち向きでしゃがんでください」
照明を落とし、スクリーンを指し示す先生。
「○○くん、通して読んでみて」
「わたしのうちでは、犬をかっています。犬のなまえは…」
「はい、ありがとう。この文章を読んで、変だな、と思うところがあるよね」
子どもたちが手を挙げる。
「この『つけた』は『なまえはお父さんがつけました』のほうがいいと思います」
「同じです」と声が上がる。
「はい、ほかには? どんどんいきましょう」
次々におかしいところを発表する子どもたち。
「今聞いたお友だちの意見で、何か共通することはないかな」「全部、文の終わりです」
「どうでしょう? それでは文章チェッカーで調べてみましょう」
「ここが、ばらばらなのかな」
「はい」と子どもたち。
「そうですね。ここがばらばらなのをひとつの言い方に直すということですね」
先生は電気をつけ、子どもたちの指摘した部分をホワイトボードに書き示す。
「みんなが言ってくれたのは、文の終わりがおかしいよっていうことだよね。じゃあね、机の上には今のおかしいところがあるままの作文の紙が2人に1枚あります。これをまず直してください。終わったらコンピュータの画面に2人で協力して全部正しく打ってみてください。目標は、印刷がこの時間でできるように。いいですか」
「はい」
「よし、じゃあ始め」
文章を直して入力しよう <個人追求・25分>
- さっと席に散る子どもたち。さっそく問題文のチェックに取りかかる。
「この『見つかった』っていうのはどう直そうか」
「『見つかりました』じゃなくて…『見つかってしまいました』かな?」
子どもたちは思い思いに相談しながら作業を進めていく。
「うん、よく直せたね。そこ難しいところだもんね」
先生から声がかかる。
問題文を直したペアからコンピュータへの入力が始まった。子どもたちの協力の仕方もさまざまだ。読み手と打ち手に分かれるペアあり、2人でキーボードを見つめるペアあり。
「カタカナにするのは?」
「打ってからカタカナ」
「よし、できた」
互いに教えあいながらどんどん文章ができていく。先生たちは子どもの様子を見守りながら、要所要所でアドバイス。
「先生、半角みたいになっちゃった」
「それはね、ここを押しちゃったから。これで戻りました」
「ええと、『はじめは・・・』」
「『じ』は『し』にてんだね。やってごらん」
「こう?」
「はい、よくできました」
突然、「先生、消えました!」と男の子。
「まちがって、これ押しちゃった」
「なくなっちゃったね。じゃあもう1回だな、がんばって」

「えーっ、せっかくやったのに」
「大丈夫、大丈夫。時間はまだいっぱいあるよ」
やがて「先生、できました」の声がかかりはじめる。
「第1号だね。じゃあ2人は、この『とてもよろこんだのでうれしかったです』
っていうところは、ほかの言い方だとどうなるか、印刷している間考えてみて」
「かわいかったです、かなあ」
「『〜だったです』という言い方はおかしくないかな。文を少し変えてもいいから、ほかのところのように『〜ました』というような言い方にできないかな」
残り約15分。
「終わった人は印刷して、2人で持ってきてください」
次々に印刷を終えて集まってくる子どもたちに、先生は同じ課題を出していく。
今日の学習をみんなで確認しよう <まとめ・5分>
- 「それでは、最初に2人で直した紙を持って集まってください」
先生が子どもたちを中央に集める。
「みなさんがあんなに上手に打てるようになったこと、最初の指示ですぐにブックを開けたことにとてもびっくりしました。
文の終わりがおかしいということ、
『〜した』ではなく『〜しました』だということに気づいた点もよくできました」
先生にほめられて子どもたちはちょっと誇らしげだ。
「ところで、まん中あたりの『とてもよろこんだのでうれしかったです』という部分はどう直したらいいでしょう?」
「とてもよろこんだので、わたしはうれしくなりました。」女の子が発表する。
「はい、文の終わりの言い方がそろいました。○○さんは『わたしは』と入れて工夫してくれたけれど、ほかには『うれしく思いました』という言い方もありますね」
板書を交えて先生が解説する。
「『〜だったです』は、つい使ってしまいがちな表現だけど、国語の文章としてはちょっとおかしい言い方ですから、これからは注意しましょう」
なるほど、という表情の子どもたち。
「それでは、かたづけボタンを押して『わたしの本だな』に保存して終了してください。プリンタのスイッチを切るのを忘れないでね」
終業のチャイムが鳴った。
コンピュータの授業は4月から始まったばかりだが、子どもたちは1時間の授業でかなりの文章を入力できるようになっている。この子どもたちが、身につけた表現力を使って、2学期、3学期とどのように学習を深め、発展させていくかが楽しみだと感じる授業でした。
授業を終えて
園部謙一教諭 ・ 萩原由美子講師へのインタビュー
今日は、萩原先生のクラスの授業に園部先生がTTの形で参加して授業を行った。園部先生は、子どもたちから「コンピュータの先生」と呼ばれていて、コンピュータ教室のレイアウト企画や年間活動予定作成に携わるなど、同校のコンピュータ教育の中心的存在だ。現在は導入後間もないため、授業の進行にもかなり関わっているが、教科内容の部分は徐々に担任へ移行していく予定。
萩原先生は今年同校に赴任されたばかり。子どもたちとともに学ぶ姿勢でコンピュータ教育に取り組まれている。
Q
コンピュータ教室を利用されるときも、子ども同士が、学びあい、助けあうことを重視されていると伺いましたが?
A
友だちは子どもにとって一番大切なものです。本校では「なかよし」を合い言葉に、友だちを思いやる心を育てるという大きな教育課題を掲げています。コンピュータ教室を設計する際にも、小学生には2人に1台のコンピュータのほうがよいと考えました。そうすることで、不得意な部分を補いあうなど協力して、心と心を通いあわせ、よりよい相互関係を築くことができます。
また、LANよりもプロジェクターなどを使って全員で学ぶことのほうが大切と思っておりますので、LANは大容量のデータを送付するなど、必要なときだけ使うようにしています。
Q
今日は入力にかなりの時間を割いておられましたが、そのようにされた理由をお聞かせください。
A
コンピュータを使い始めて3カ月ですが、この学級の子どもたちは、毎回確実に入力技能が向上していて、キーボード操作が楽しくなり始めた時期です。子どもたちの中に表現したいという欲求があるだろうと考え、その気持ちを大切にするために入力中心の授業を組み立てました。
Q
年間活用計画を立てておられるようですが、どのような考え方がベースになっているのですか。
A
年間活用計画は、マルチメディアでの情報活用能力の修得を主眼に立案しています。コンピュータは、基礎的な活用能力があって初めて教科等の学習に生かすことができると考えるからです。リテラシーの力がないと、教科の授業で使っても、操作に追われて十分な学習効果が上げられませんので、そうならないように訓練することが計画の基本になっています。その上で担任とTTが相談して教科等の活用のあり方を探っていき、学年に広げていくというのが現在の課題です。
Q
本時は、年間活用計画で予定されている情報教育と、国語教育の両方の狙いを持った授業のようでしたが、両者の関係について先生のご意見をお聞かせください。
A
コンピュータを通すと文字情報が整理でき、修正やレイアウトの工夫も容易にできます。自己の感性を生かした表現を形にできること、それを学習結果としてきれいに出力できることは、子どもの学習意欲の喚起に直結します。
また、今一番中心になっているのは最も基本となる文字情報の活用なので、国語の学習と関連づけて授業をすることが容易だと考えています。
Q
将来的にはどのような分野にコンピュータ活用を広げていきたいとお考えですか。
A
データベース的な活用については、高学年向けに近々取り組む予定です。今は国語が中心ですが、社会科や理科など、いろいろな教科での可能性を考えていきます。ゆくゆくはインターネットでの情報検索や、自分たちのホームページを作って学内外との情報交流などにまで発展させていくのが夢です。

(先生からひと言)
操作リテラシー面では、一度覚えたことは忘れないでほしいと思っています。ですから、あえて一度しか教えないようにして、あとは子どもが自分たちで教えあい、助けあいながら学んでいくように心掛けています。 |
|
(先生からひと言)
基本操作の重要性は、もちろん最初に徹底しますが、こうした場面では、本人に失敗したのではないと意識させることが大切です。習うより慣れろの精神で指導しています。 |
| |
|
|
(先生からひと言)
子どもたちは発表の中などでかなり使っている言い方ですが、正しい表現ではありません。ちょうどいい機会なので、本時のポイントとして指導しました。言い回しを工夫しないと直せないような文末の例として強調したい部分です。 |
|
(先生からひと言)
予定では直した文章を発表しあう場を設けたかったのですが、時間の都合で今回は割愛しました。この部分はまた改めて機会を作りたいと思います。 |
| |
|
|
(解説)
コンピュータ教室は、教卓側を除く三方の壁面に、子ども用のコンピュータ16台とプリンタが配置されています。中央は、学級の人数によって集合学習スペースとして使用する場合と、4台のコンピュータを追加して設置する場合とがあります。コンピュータは子ども2人に1台で利用。教卓の両側にはモニターを備え、プロジェクターは教室後方のスクリーンに映写して使用します。 |
|
(子どもたちの声)
●この前は途中までしかできなかったけど、今日は印刷までできてうれしかった。
●前よりもすらすらキーボードが打てるようになって、打つのがおもしろくなった。
●文章チェッカーはまちがいがわからないとき便利なので、自分でも使ってみたい。
●ひとりでは大変なことも、2人だと協力してできるのでいい。
●手書きでは消し跡などが残りやすいけど、コンピュータはきれいに印刷できて気持ちいい。 |
|