| Multi Book授業実践レポート
教室にマルチブックがやってきた
| 千葉県袖ケ浦市立昭和小学校
全校児童555名の比較的大規模校。袖ケ浦市は全市的にコンピュータ教育に力を入れており、年間活用目標が設定されている。同校でも昨年秋に現在の20台体制が完備されWindows95が動作するコンピュータが22台。指導には教室内ネットワークを活用。OHC、ビデオデッキ、スキャナー、カラープリンタ有。各学級に週1時間ずつコンピュータの時間を割り振って、本格的な活用に向けて意欲的に取り組んでいる。
|
|
「小学校3年生社会」
〜多面的に学ぶことで発見を深める
「道探検」で調べたことを絵地図にまとめ、リアルタイムで比べあう〜
◆実践日 1998年6月29日(月)
◆学級の人数 31名(男13人、女18人)
利用したソフト: マルチブック小学校3年[社会]『わたしの町たんけん』
 |
|
色えんぴつツールを使って地図を描き、マーク集から目印となる建物などを選んで貼りつけて、その地図上のマークに調べて発見したことを書くことができるソフト。 |
●本時の位置づけ
「学校の周りの様子」という単元に即して、先日、学校周辺の土地利用や道の様子を調べる班別学習「道探検」を実施しました。今回は、調べたことをコンピュータで作品にまとめていく学習の2時間目です。
●本時の目標
前時は道路や線路など、基本の地図を作成しました。本時はそこに目印となる建物などを書き入れ、併せてメモにその近辺の様子を示すコメントを記入していきます。特に道の幅や交通量に着目させ、この地域の土地利用がどのように発展してきたか学ぶことを目標にしています。
●コンピュータ活用の目的・意図
通常授業では、目印ひとつ書くのにも、子どもによって所要時間にばらつきが生じがちです。マーク集はその問題を解決してくれますし、修正も容易。また、作品を見せあい、その場で評価しあえることも、子どもの学習意欲につながると思いました。
|
この前作った地図に調べたことをまとめよう <導
入・5分>
- 「はい、ひとりがCD-ROMをセットしている間に、ほかの人はフロッピーを取りにきて」
元気な先生の声に促され、子どもたちは一斉にマルチブックを起ち上げる。
「みんな自分のフロッピーを入れて。フロッピーはどこへ行ったら読み込めるんだったかな?」
「『本だな』!」
「違うよ、『かばん』だよ!」
「そう、『かばん』だね。『かばん』に行って、移動だったかな、複写だったかな?」
「移動!」
「はい、移動しましょう。終わった人から先生の方を向いて」
先生はテンポよく説明を続ける。
「みんなは今まで、道探検をして地図を書いてきました。今日は、同じ地図を使ってみんなで建物を建てていきます。探検したときのしおりは持ってきたかな」
「はーい!」
子どもたちが3枚つづりのしおりをひらひらさせる。
「そのしおりを使って、探検して見てきた建物を、黒板に書いてあるように絵地図にまとめようということです。それではまず近くにある先生用のコンピュータを見てください」
- 先生は道や線路を書き整えた地図を教師用コンピュータに転送する。

「この前は学校と海蔵院、お寺を建てたよね。ここが昭和小学校です」
学校をクリックして、メモを表示。
「この前は学校の名前をここに入れたよね。今日は、道の幅や車の量はどうだったか、信号は見えたかどうかなど、探検してきたことをソフトキーボードで書き込んでいきましょう。新しく建物を建てたら、同じように進めていきます。先生が立っていたところはどこだったかな」
「伊東サイクル」
「伊東サイクルの前の道はすごかったよね、大きな道で。そういうふうに、周りの様子や車の量など、調べてきたことを友だちと相談しながら、協力してメモしていってください」
町の様子は、どんなだったかな <個人追求・30分>
- 指示通りスムーズに作業を始める子どももいるが、なかなか思うに任せない子どももいるようだ。
「先生、出てこないよ」
心細そうに男の子が訴える。
「保存がうまくできてなかったのかな? じゃあ、先生のデータを持ってくるから待っててね」
データを複写して「よし、これでOK」
「先生、何書いたらいいの?」
今度は別の男の子。
「学校の前の道は毎日通っているよね。どんなふうだか思い出してごらん」
そのひと言でひらめいたのか、男の子は盛んにマウスを操り始めた。
「そでがうらえき…あっ、『えお』になっちゃった」
「まちがえたら『けす』でもどすんだよ」
「ええと、いとう…」
「サイクルって打つんなら、『かたかな』を押さなくちゃ」
子どもたちが教えあいながら地図作りを進めていく。
建物優先で進める子ども、メモに力を入れている子どもなど、それぞれに個性的だ。
「えーっ、小学校ここ? お寺もこんなところかなあ? しおりの地図とよく見比べてごらん」
「神社の周りを塗りたいの? それなら、神社のマークをいったん空いたところにひっこすと、やりやすいよ」
「おっ、建物をたくさん建ててるなあ。そろそろ説明も書こうよ」
「文が終わったところで行を変えてごらん。ぐんと読みやすくなるよ」
子どもたちを見て回りながら先生が声をかける。
「ずいぶん進んだね。自分たちだけが見つけた建物もどんどん書き入れていいんだよ」

「ここに犬がいたよ」
「犬かあ!? 残念だけど犬のマークはないなあ」
意表をつかれて先生の顔が思わずほころぶ。
「おばあちゃんのうちを見たよ」
「よし、じゃあそれを書き込んでごらん」
友だちの地図と比べてみよう <まとめ・10分>
- 「それでは、マウスから手を離して。先生の方を向いてください」
先生はネットワークで子どもたちの画面を切り替え、話し合いに集中させた。
「いろんな地図ができました。早い人もいれば、丁寧にひとつひとつメモをきちんと書いている人もいますね。みんなの作品を見ていきたいと思います」
転送された画面を見て、
「あたしのだ!」
女の子が声を上げる。
「まず海蔵院を見ていきます。じゃあ、○○ちゃん、発表してください」
「せまい。くるまはあんまりとおらない。○○ちゃんのうちがある。くらい。おはかがある」
「はい、どうですか、みんな。意見やつけたしのある人は言ってください」

「『せまい』の前に『みちのはばは』と入れたほうがいいと思います」
別の女の子が発表する。
「そうだね。それではもうひとり海蔵院のを見てみましょう」
「みちのはばはせまいが、おおどおりにつながる。くるまのとおるりょうはおおい。しんごうはみえる」
「さっきの○○ちゃんの意見と少し違いますね。海蔵院の前の道は大通りにつながってますか」
うなずく子どもたち。
「車の量はどうでしょう?」
「大通りのほうは多いけど」
「海蔵院の前の道は狭くて1台ずつだよ」
男の子と女の子が交互に意見を出す。
「信号機はあったのかな?」
「ない!」
「ないよね、じゃああとで直しておこう。次に伊東サイクルのところはどうでしょう」
次に示した子どもの画面には、「みちはひろい。くるまはおおい。しんごうはみえる」とシンプルなコメント。
「海蔵院と比べてみて、ほかにつけたすことはないかな」
「道の周りにお店やガソリンスタンドが多かった」
女の子の声がする。
「そうですね、あとはいいかな? それでは席に戻って」
今度はかなり書き込まれた地図を子どもたちのコンピュータに転送する。
「この地図には信号機がたくさんあるよね。○○くんと○○くんの作品です。みんなの地図にはまだ信号機があまりないから、今度の授業では信号機も建ててみましょう。それでは、道探検の感想を聞かせてください」
「楽しかった」
「場所によって道の様子がいろいろ違っていたよ」
「伊東サイクルのある16号バイパスは新しい道で、お店やレストランがたくさんあった」
「全体的に狭い道が多かった」
「はい、ありがとう。今度の授業で続きをやりますから、メモに書くことなどをまとめておいてくださいね」
各自の地図をフロッピーに保存させて、先生は授業を終えた。
同じ道探検の結果をまとめるといっても、子どもたちの観察は実にさまざま。着眼点の違いで地図のオリジナリティは無限に広がります。次は道の様子を信号機に着目して学習することになりそうです。調べたことをしおりに記入する、地図にまとめ直す、お互いの作品を見せあい、情報を共有化するなど、いろいろな角度からアプローチすることで、学習が深まっていくようでした。
授業を終えて

森 雅之教諭へのインタビュー
今年新卒で同校に赴任されたという森先生。子どもたちの頼れるお兄さんという雰囲気だ。「私自身も新人ですが、コンピュータ教育もまだ新しい分野。どんどん授業に取り入れて、子どもたちと一緒に可能性を広げていきたいと思っています」
Q
教室内に3カ所あった教師用コンピュータというのはどのような使い方をされているのですか。
A
特に教師専用というわけではありませんが、子ども同士の作品などを見比べさせる場合に、各自の端末の画面を消さずに比較できるように空き端末を利用しているものです。本時は、空き端末が5台ありましたので、各列の中間に1台ずつという配置にしました。
Q
コンピュータ活用のメリットについて、先生のお考えをお聞かせください。
A
最大のメリットは、情報の共有化が容易に、かつリアルタイムでできるということです。ノートでは一度に全員に見せることができませんが、その点ネットワークは非常に便利です。また、子どもたちはコンピュータが大好きなので、コンピュータ教室=意欲づけという側面も見逃せません。今回の授業でいえば、絵をドラッグして貼りつける作業に子どもはとても喜んでいましたし、メモが入力できるので、調べたことが確認できてよかったと思います。
Q
子どもたちはデータを各自専用のフロッピーに保存していました。この授業のために用意されたものですか。
A
今年は3年生以上全員にひとり1枚ずつフロッピーを支給しています。ハードディスクに保存することも可能ですが、自分の物になるということは子どもにとって大きな動機づけになります。作品を保存したフロッピーは最後にプレゼントしようと考えています。
Q
今後コンピュータをどのように活用していきたいとお考えですか。
A
近い将来実施される新学習指導要領では、体験学習や相互学習といったことが重視されています。教室ではなかなか難しい体験の部分や、教科の枠に囚われない分野でコンピュータは威力を発揮してくれると思います。

(先生からひと言)
キーボード操作は4年生からローマ字入力を学習させるという目標を学校全体で立てて取り組んでいますので、3年生まではソフトキーボードを活用することを徹底しています。
|
|
(先生からひと言)
「思ったことも書いてもいい?」という子どももいたので、どんどん自由にやらせました。探検したことを、確認して記録することが大切なので、ここでは内容や書き方は絞らずに指導しました。 |
| |
(先生からひと言)
友だちの作品を見ることで、子どもたちは新たな視点に気づくことができます。そうした発見を生かし、工夫して独自の作品を作らせることが一番の狙いです。あと2〜3時間かける予定なので、地図に記入するテーマを増やして、学習を深めていきたいと思います。
|
|
(解説)
コンピュータ教室は通常教室の1.5倍はあるゆったりとした空間。三方の壁面に子ども用の端末とプリンタをレイアウトし、机間指導をしやすくしています。空き端末は配置を適宜工夫してデータ転送用に教師が利用。
|
| |
(子どもたちの声)
●この前はしおりと画面を照らし合せるのが難しかったけど、今日は2回目なのでだいぶ慣れてきた。
●しおりにメモを取り忘れたところは一生懸命思い出しながらやりました。
●信号まで建てている人がいてすごいなと思ったけど、自分たちのほうがメモの文はたくさん書けたと思います。
●友だちと一緒だと、わからないことを相談できるし、かわりばんこにマウスを使えて楽しい。
|
|