Multi Book授業実践レポート

教室にマルチブックがやってきた

千葉県東金市立豊成小学校 千葉県東金市立豊成小学校

全校児童501名、各学年2〜3学級の学校。昨年春の新校舎落成と同時にコンピュータルームを開設。Windows95が動作するコンピュータが22台。ネットワーク有。プロジェクター、ビデオデッキ、スキャナー、カラープリンタ等機器も充実。コンピュータの時間は各学級に週1時間ずつ割り振られ、活用法は学級担任が工夫している。より活用効果を高めるノウハウを求めて、研修にも力を入れている。

「小学校3年生学活」(算数教材の応用)

〜対象学年を超えて低学年教材を応用する
             
「ビンゴで広げよう、友だちのわ」〜


◆実践日      1998年6月19日(金)

◆学級の人数   40名(男22人、女18人)

利用したソフト:マルチブック小学校1年[算数]
          『たしざんビンゴ』『ひきざんビンゴ』

「たしざんビンゴ」   「ひきざんビンゴ」
     
4×4マスの盤面に並んだ数字が縦・横・斜めのいずれかの列でそろうように、画面上の式に数字を入力するソフト。



本時の位置づけ
小1の算数教材ですが、本時は学活の時間を使って、友だちづくりを目的に活用しました。クラス替えから2カ月半、お互いをより身近に感じてほしいと企画したものです。

本時の目標
できるだけ多くの友だちとなかよくさせることが第一の狙いです。特に、男の子同士、女の子同士が固まりやすい年ごろなので、異性との対戦は得点を高くするなど工夫しました。

コンピュータ活用の目的・意図
小学校ではコンピュータに慣れ親しませることが一番大切だと考えます。会話のきっかけを作ると同時に、コンピュータの操作、ソフトの扱いに慣れさせることをめざしています。



ビンゴでクラス全員となかよくなろう  <導 入・15分>
 手に手に筆箱とプリントを持った子どもたちは、なかよし同士並んで席に着く。校長先生はじめ、4人の先生方が参観に訪れた。
「まず電源を入れてください」
「先生、ネットワークはキャンセル?」

 子どもたちは先生の指示が待ち切れない。
「いい質問だね。今日はサーバーは使いませんから、キャンセルにしてください」
 先生からCD-ROMを受け取り、迷わず「わたしの机」を開いていく。
「それでは、さっき渡したプリントを見てくれますか」
プリント  気がはやる子どもたちをなだめるように先生が声をかける。
「みんなは40人のクラスだよね。先生も小学生のころ、42人とか43人のクラスで6年間過ごしてきました。そうすると、『あれ、あの子とは何回口を利いたかな?』というようなお友だちも、なかにはいたわけ」
「さあ、みんな思い出して。3年生になって初めてクラス替えをして新しいお友だちができたでしょう」
「うん」

 子どもたちが相づちを打つ。
「でも、あんまりお話をしたことのないお友だちがいるんじゃないの」
「いるよー」
と男の子数人の声が上がる。
「ドッジボールをしたり、給食の班でおしゃべりをしたり、いっぱいお友だちはできていると思うけれども、あまり今までにしゃべったことのないお友だちとも、ぜひコンピュータを通してなかよくなってもらいたいなということで、こんなルールを考えてみました。『ビンゴで広げよう、友だちのわ』これが今日のテーマです。1番を読んでください」
「まず、となりの友だちと、たいせんします。ゲームが…」

 子どもたちが声をそろえて読み上げる。
「はい。でも、ただやるだけだと、だれとやったのかわからなくなっちゃうから、下に対戦表というのがあります」
「裏にもあるよ」
と男の子。
「そう、いっぱいお友だちと対戦できるようにね。では2番を読んでみましょう」
授業風景1  先生は子どもたちにプリントを音読させながら、対戦表の記入方法、得点の集計方法などをわかりやすく説明していく。
「この授業時間のなかで、みんな何点をゲットできるのか、友だちをいっぱい広げながら楽しくゲームをやってみたいと思います。では『みんなの本だな』に行ってみましょうか」
 言われる前から本だなを開いている子どももいる。
「今日はビンゴなんだけど、たしざんとひきざん、どっちをやりましょうか」 友だちの輪を広げるというメインテーマのほかに、たし算・ひき算の復習という狙いも持っています。3年生ともなると、通常の授業ではたし算やひき算を取り上げにくいため、基礎にやや不安を残した子どもへのフォローの意味も込めました。と先生。
「たしざーん!!」
「ひきざーん!!」

 教室中から両方の声が上がる。
「それでは、隣同士お友だちと相談して決めましょう。どちらでもいいです」
「先生、もうやっていいの?」
「いいよ、始めましょう。操作がわからない人は近くのお友だちに聞いてみてね」

勝負! 勝負!!  <個人追求・25分>

「じゃんけん、ぽん」
 各ペアで先攻・後攻を決めると、一斉にビンゴの数字をあける音、音、音。
授業風景2  ややあって、ファンファーレが鳴った。
「もう勝負ついたの? 早ーい!」
子どもたちの声が弾んでくる。何度も使っているソフトですが、3年生になって「こうすれば同点に持ち込める」という視点が出てきました。どんな手を打てば相手に有利にしないですむかまで考える子もいて、子どもの発達に従って取り組み方が変化してきました。
「さあ、校長先生、教頭先生もみなさんとの対戦を待っていますから、お友だちと終わったらやってみましょう」
 隣同士の対戦が済むと、子どもたちは対戦相手を求めて移動し始める。
「だれかー、やろうよー!」
「校長先生、勝負しよう」
「ねえ、終わったら次、ぼくとね」

  次々に対戦表が埋まっていく。
授業風景3 「対戦が○で勝ちが◎だから、20+30で50点!」
「○○ちゃん、何人目?」
「もう5人もやったよ」

  先生方のなかでも、教頭先生はなかなか手ごわいようだ。
「わあ、あがっちゃったあ。先生の勝ち。うれしいなあ」
 子どもたちも、なんとか先生方に一矢報いようと知恵を絞る。 ビンゴには偶然に左右される要素もあり、子どもでも大人に勝てる可能性があります。真剣にやって大人に勝つうれしさは子どもにとって大きな達成感になるようです。
授業風景4 「よっしゃあ、リーチ!」
「先生、ぼくここまで全勝だよ」
「見て見て、もう300点いったよ」
 子どもたちの声が飛び交い、教室内は熱気むんむん。
「やったあ、教頭先生に勝ったよ」と女の子がにっこりした。はじめのうちは、照れがあるのか、同性の対戦相手を求めていた子どもたち。5分、10分と経つうちに、だれからともなく異性との対戦が始まり、交流が活発化しました。
「よし、じゃあそれを書き込んでごらん」

授業風景5

たくさんの友だちと対戦できたかな?  <まとめ・5分>


「みんな盛り上がっているけれども、ちょうど時間になりました。勝負の途中の人はそのまま続けて、ほかの人は点数を合計してプリントをまとめてください」
 名残惜しそうな子どもたち。
「では、空いている席に座ってくれますか。みんなに感想を聞きたいと思います」
 先生授業風景6は授業用のマイクを子どもたちに向けてインタビューを始める。
「何人と対戦できたかな」
「7人やった」
「10人やったよ」

 子どもたちはインタビューを受けたくて、先生に群がっていく。
「次は感想を聞かせてください」
「すごく楽しかった」
「おもしろかった」

 男の子も、女の子も、みんな笑顔。興奮ぎみの声がそこここから聞こえてくる。
「みんなありがとう。席についてください。それでは、コンピュータはきちんと終わってあげないと壊れてしまいますから、マルチブックの終わり方はわかるかな?」授業風景7
「はい」
「先生、消し方忘れちゃったからみんなに教えてもらいたいんだけど、どうやってやればいいの?」

 子どもたちが口々に終了手順を先生に教えていく。
「ありがとう。みんなのおかげで終わることができました」
 同じようにWindows95の終了手順も子どもたちに発表させていく先生。
 和気あいあいのうちに授業が終了した。


「3年生に1年生の教材?」「子どもが飽きてしまうのでは?」「単なる遊びになるのでは?」といった取材前の疑問を打ち消す授業でした。改めて、先生の目的や授業の組み立てによって、教材ソフトにさまざまな活用方法があることを感じました。


授業を終えて

依岡 工教諭

依岡 工教諭へのインタビュー

 今年から情報教育担当になられた依岡先生。コンピュータ歴は中学生以来のベテランだ。「子どもたちはコンピュータが大好き。一斉授業では難しい個に応じた教育にコンピュータを生かしていければと思っています」


Q
きょう使われた教材は何度かお使いいただいているようですが、子どもたちの学習する様子はどのように変わってきましたか。

A 計算力に余裕が出てきた分、作戦に頭を使う子が増えてきました。特に要求はしていないのですが、自分たちでどんどん発見していくわけです。また、自分が発見したことはほかの子にも教えたくなるようで、波及効果もとても大きいと感じています。

Q コンピュータを授業に取り入れられて2年目ということですが、活用状況はいかがですか。

A コンピュータをどのように使うかは各学級担任の裁量に一任されています。低学年にはマウスから導入して徐々にキーボード操作へと移行していきます。使用ソフトはゲーム的なものからドリルまでさまざまですが、上級学年では教室内ネットワークを利用したメールのやり取りや社会科の調べ学習なども行っています。

Q 子どもにコンピュータを指導する上で、特に気をつけておられる点についてお聞かせください。

A 教師は何を教えるかではなく、何を教えないのがより効果的かと常に考えています。教師がたくさんのことを説明するのではなく、子どもにより多くの体験する機会をつくるように心がけています。例えば、子どもがテンキー入力を覚えたら、キーボード側で数字を入力したり、リターンキーを操作して見せるなどして、「あれ、こんなこともできるのか」と気づかせるように導く手法です。子どもが「それ、どうやってやるの」というように自ら発見し、知りたいという欲求を示してきたときに応えてやるようにしています。

Q 教材を使われていて、何かご意見があれば、お聞かせください。

A 大人がおもしろいと感じることは、子どももおもしろいと感じます。例えば、小学生向けのドリルだったら大人はやってみようとは思いません。でも、きょう使った「ビンゴ」は、大人でも楽しめます。子どもとやっても必ず大人が勝つとは限りません。それは、ソフトが対話型になっていて、自分のやり方によって、いろいろな形で取り組めて、いろいろな結果が出てくる余地が残されているからです。1つの使い方しかできないのではなく、先生や子どもの創意工夫でいろいろと使えることが魅力です。




(先生からひと言)
友だちの輪を広げるというメインテーマのほかに、たし算・ひき算の復習という狙いも持っています。3年生ともなると、通常の授業ではたし算やひき算を取り上げにくいため、基礎にやや不安を残した子どもへのフォローの意味も込めました。
  (先生からひと言)
何度も使っているソフトですが、3年生になって「こうすれば同点に持ち込める」という視点が出てきました。どんな手を打てば相手に有利にしないですむかまで考える子もいて、子どもの発達に従って取り組み方が変化してきました。
 
(先生からひと言)
ビンゴには偶然に左右される要素もあり、子どもでも大人に勝てる可能性があります。真剣にやって大人に勝つうれしさは子どもにとって大きな達成感になるようです。
  (解説)
はじめのうちは、照れがあるのか、同性の対戦相手を求めていた子どもたち。5分、10分と経つうちに、だれからともなく異性との対戦が始まり、交流が活発化しました。
 
(子どもたちの声)
●1回も勝てなかったけど、たくさん対戦できてよかった。
●2年生のときはあまり勝てなかったけど、3年になって強くなった。
●ビンゴをたくさんやったら、計算が得意になった。
●相手に先攻を取らせて、相手があけたコマを利用するのがコツだよ。
●校長先生は強そうでどきどきしたけど、引き分けられてうれしかった。

実践校紹介へ ホームへ