「いろいろな形の文」を読んでみよう <導
入・5分>
- 今日は、何人かの母親が、コンピュータの授業を見に来ている。
子どもたちのコンピュータ画面には、教科書の「いろいろな形の文」のところが写し出されている。先生がタイトルや文を指で示す様子も子どもの画面で見ることができる。
「今日は『いろいろな形の文』をコンピュータを使って勉強します。最初にここを読んでみようか。みんなでいっしょに、はい」
先生が教科書の本文を示すと、子どもたちの元気な声が響いた。
「うまがはこんでいます」
「なにをはこんでいますか」
先生が質問文のところを受け持つ。
「うまが花をはこんでいます」
「どこにはこんでいますか」
「うまが花をいちばにはこんでいます」
「『何を』とか『どこに』という言葉を入れると、だんだん文章が詳しくなっていったよね。今日はそういう勉強を、マルチブックを使ってやっていきます。みんな、CD-ROMを入れてください」
先生は今日の目的を告げると、画面を先生のコンピュータに切り替えた。
どんな言葉を入れればよいか、
先生のを直してください <展開1・15分>
- 「それでは、『本箱』の中のこれをクリックして。なんて書いてあるんだ、これ?」
「がのをにへでは」
子どもたちが少し自信なさそうにマルチブックのタイトルを読む。
「ね、なんか変なのがあるね」
子どもたちとやりとりしながら、操作を続ける。
「あ、ここに入れるんだ!」
助詞を入れて文を作ることに気づいた子どもが叫ぶ。
「ここに何かを入れるみたいだね。何を入れるんだろうね」
「数字」
「数字かね?あさがお1とか?」
「文字」
「そうだね。矢印で選んでいくんだね」
先生は選択のしかたを説明しながら、自分で言葉を選んでいった。
「あさがおが 見る、いいねこれ」
「なんであさがおが見るんだ?」
さっそく、子どもが反応する。みんな、先生の入れる言葉に釘づけになっている。
「あさがおに たねを まく」
「あさがおを 水を やる」
「あさがおの さく」
「先生は、今、4つともできたよ。だめ?」
先生が言うと、子どもたちの大きな声が響いた。
「だめ〜!」
「先生何点かね?」
「0点〜!」
「あら0点か、こんなにたくさん人が見てるのに0点かい。 困ったね」
先生が言うと、子どもたちはしてやったりという表情だ。
「それでは、みんながやってください」
先生の声がかかると、待ちきれないように子どもたちが始めた。
1〜2分で声が、あちこちで聞こえる。
「できた!」「簡単だった!」という「もうできちゃったみたいだね。ほんとに簡単だった?じゃあ、先生のを直してくれる」
先生は、最初の文を指し示した。
「『あさがお』、なんだろう?」
「を」
「を」を選択して、子どもたちに言う。
「みんなで読みましょう」
「あさがおを見る」
こうして先生は、1つずつ問題を答えるごとに音読させていった。
最後に確認をする。
「こうなったところは?」
「は〜い!」
全員が手を挙げた。
「すごいな。もうちょっと難しいの、挑戦してみる?」
そう言って先生は、2ページ目、3ページ目に進ませた。簡単な問題に、どの子も余裕の表情だ。
次の問題はやめにしようか? <展開2・10分>
- 「ここまではみんなできるかもしれないけど、次の問題はうんと難しいので、たぶんできないと思うので、やめにしようかと思います」
思いがけない先生のひとことに、とたんに子どもたちが反応する。
「やりたい!」
「みんな見てるよ。できないと困るからやめておくか」
「ぼく、できなくったっていいもん」
「そう?そこまで言うのなら、2番を押してください」
子どもたちの歓声があがる。
「今度はいっぱいあるよ。入るのはどんな言葉かね。上にさっきよりたくさんの言葉が出てるよ。こういう言葉を使うんだね」
第2章のタイトルの「がのをにへでは」に注目させながら説明する。
「はい、それじゃさっそくやってみようか」
すぐに子どもたちはコンピュータに向かった。
第2章は、選択肢の種類が増え、答えが1つでない文も含まれている。
「に」を入れるか「へ」を入れるかで迷っている子どもがいる。
すぐにできる子どもと、少し考えてしまう子どもとに分かれた。
先生は、考えてしまう子どもを中心に見て回っている。
「これ絶対できないかと思ったけど、できたみたいだね。みんなでいっしょに教えてください」
1つ1つ入る助詞を確認した後に、子どもたちに音読させていく。終わったところで先生が質問した。
「ちょっと聞くよ。何が進みますか?」
「ふね」
先生もいっしょに復唱する。
「ふねがすすむ」
「だれがまきますか?」
「せんせいがまく」
「何をまきますか?」
「ひまわりのたねをまく」
「どこにまきますか」
「かだんにまく」
「だれが」「何を」などの質問形式で聞かれても、子どもたちは、スムーズに答えを言えるようになっている。
「どこにありますか」「なにがありますか」 <展開3・15分>
- 「それでは、今度は3番をクリックしよう」
空欄ばかりの画面が出てきた。
「今度は、もうちょっと長い文を作ります。みんなのところに1枚ずつプリントを配るからね」
そう言うと、先生は子どもたちにプリントを配って歩いた。そして、子どもたちの画面にプリントを写し出す。
「ここのところを読んでみて」
「どこに、なにが、ありますか」
先生は文字のところを子どもたちに音読させ、次の課題を伝えた。
「『どこにありますか』は『どこ』、『なにがありますか』は『なに』を、隣の人に見られないように書きます。後で当てっこするからね。書けたら裏返しておいてね」
子どもたちはすぐにプリントに向かった。みんな、いろいろな言葉を考えている。学校や家など、身近な言葉が多いようだ。
できあがった子どもが出たところで、先生は入力の説明を始めた。
「これからね、お互いに相手が何を書いたかを質問して、コンピュータに書きます。書いた後に、合っていたかどうか確かめます」
そして先生は、子どもたちにキーボードツールを表示させた。
「最初の人はどちらでもいいけど、ひとりずつ質問します。どういうふうに聞けばいいんだっけ?」
「どこにありますか」
子どもたちが答える。
「そう、『どこにありますか』と聞いた答えを入れてください」
先生は、例として「がっこう」と入力していく。
「今度は何を質問するの?」
「何がありますか」
「『何がありますか』と質問して、『てつぼう』と答えたら…」
今度は、「てつぼう」と入力する。
「次は交代して、さっき質問された人が質問して書いてください。全部できたら見せっこして確かめます。はい、やってください」
子どもたちは、キーボードツールを使って入力していく。
「小屋に犬があります」という文を入力している子どもがいる。
「『います』にしなきゃだめだな」
先生のアドバイスで、「います」に直している。
「『テレビ』ってカタカナで書いていい?」
先生に聞いてくる子どももいる。
「いいよ」という先生の返事で、さっそくカタカナで入力している。
「あいてる場所に文を書いていい?」
終わってしまった子どもが、先生に聞いている。
「次のやるか」
と言って、先生はその子たちに2枚目のプリントを渡した。
チャイムが鳴った。
「ちょっとストップしてください」
先生が声をかけ、まとめに入る。
「2人とも質問をして、書いたのが2人とも正解だったところは?」
何人かの子どもが手を挙げたが、できあがっていない子どももいる。
「2人とも正解した人は、2枚目に移っていますね。まだできあがっていない人もいるけど、時間が来たので、今度のときに続きをやりたいと思います」
まだまだ文作りを続けたそうだった子どもたちは、名残り惜しそうに、コンピュータを終了させた。
わざと問題を間違えてみせる、子どもが乗ってきたところで「次の問題はやめようか」と言ってみるなど、先生は子どもの意欲を上手に引き出していきました。また、前の授業の感触で、第3章で自由に言葉を入力するのは無理と判断して用意したプリントも効果的でした。いつもの授業と同じようにコンピュータの授業を組み立てる、子どもの目線に立って教材(課題)をどういう形で与えて、授業をどのように進めるかを考えることの大切さを教えてくれる授業でした。
授業を終えて
小島俊一教諭へのインタビュー
昨年度、同校ではコンピュータ活用の校内研修をおこなった。そのときの中心的存在となり、その後も積極的に活用している先生の一人。「小学校が中学校と違うのは、全部の先生がコンピュータを使えないといけないことです。子どもたちが楽しみにしているから、どの子どもも平等にできるようにしたいんです」学校全体を考えてコンピュータ普及に尽力されている姿がとても印象的な先生だ。
Q
今日の授業を終えて、率直なご感想をお聞かせください。
A
今日は、単にソフトが教科書に合っているからやらせるだけではなく、このソフトを授業のどこでどう使うかを考えて構成できたことがよかったと思います。ただ、少し時間がたりなくなってしまいました。本当は、プリントを使った後半部分が学習のねらいの中心ですが、最初から流してやってみました。後半は、時間がなかったため説明が不十分になり、とまどった子どももいましたが、次の時間からはうまくできると思います。
Q
先生がご自分でお作りになったプリントを使っていらっしゃいましたが、そのねらいを教えてください。
A
既成のソフトは標準的な作りをしているので、この学校のこの子どもに合わせる工夫が必要だと思います。マルチブックの第3章では一気に自由に書こうという形になっていますが、前の授業の感触から自分のクラスはこれだけの文を書くのは難しいと思いました。書ける子どももいるのですが、そうでない子どももいるのです。質問形式で聞いて書いた方がやりやすいと思い、5種類ほどプリントを作りました。

(先生からひと言)
わざと間違えたりというのはふだんからよくやっています。間違えやすい箇所を子どもたちの意識の中に定着させることができます。また、先生はできなかったけど自分はできたぞという成就感を味わわせ、やる気を引き出すこともできます。 |
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(先生からひと言)
特に低学年の場合は、言葉に出して言うことが大切だと思います。高学年は頭の中で考えますが、低学年は言葉に出すことによって定着していきます。コンピュータを使うとソフトをこなすことばかりになりがちですが、ふだんのように音読をさせたりすることも重要だと思っています。 |
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(先生からひと言)
どちらでもよい場合は、子どもたちの中から出てきたら押さえようと思っていました。しかし、今日の焦点を当てる部分が「いちばん一般的に使う部分がわかればよい」ということでしたので、あえて触れませんでした。 |
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(先生からひと言)
「何が」、「どこに」などの部分を考えられるように、意識して質問形式にしていきました。この後、第3章で使うプリントへのつながりも考えています。 |
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(解説)
マルチブックの第3章に、先生が教科書に合わせて質問形式での文を加えて作ったプリント。プリントは全部で5種類あります。 |
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▲先生が作ったプリント(一部) |
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(子どもたちの作品)
●いえに テレビが あります
●うちに ゲームが あります
●こうていに いろいろなあそびどうぐが あります
●あきましょうがっこうに コンピュータが あります
●たんぼに いねが あります
●きのうえに ずぼんが あります
●はこに とりが います
●うまに げんきが あります |
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