「小学校2年生算数」
〜ゲーム性のある教材を「授業」として組み立て活用する
対戦の中での工夫、学び合いが意欲を引き出し、計算力を高める〜
◆実践日 1998年6月9日(火)
◆学級の人数 27名(男15人、女12人)
利用したソフト:
マルチブック小学校1年[算数]
『ひきざんビンゴ』
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ひき算の式を入力し、目的となる数を消して、自分のビンゴを完成させる対戦型ソフト。子どもたちの興味・関心を高めながら、自然にひき算の計算力を身につけることができる。 |
●本時の位置づけ
2年生になって、くりさがりのあるひき算を習ったところです。1年生から今までに習ったたし算、ひき算が定着できていない子どもがいるので、ゲーム的に楽しくできる「ひきざんビンゴ」で、無理なく習熟できることを狙いました。この後に文章問題の学習を予定しており、コンピュータと紙面の学習をうまく組み合わせて、学習の定着を図っていく予定です。
●本時の目標
「たしざんビンゴ」を一度やっているので、ビンゴのやり方を押さえながら、子どもたちが2人一組でビンゴの対戦をしていきます。ビンゴに勝てる方法を考えながら、ひき算を楽しく学習できることが本時の目標です。
●コンピュータ活用の目的・意図
コンピュータは個々の活動に反応します。例えば「ひきざんビンゴ」なら数を入れると音が出たり、その結果を出してくれたりします。それだけで子どもはひきつけられます。また、対戦型ということで、相手に勝つために一生懸命取り組みます。特に、算数が苦手な子どもに効果があるようです。
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チームのみんなでひきざんビンゴをしてみよう <導
入・10分>
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チャイムが鳴った。3時間目の始まりだ。先生のコンピュータ画面が正面のモニターに大写しになっている。
「今日は最初にCD-ROMをわたしておきますから、みんな、ここまであけておいてください」
先生がCD-ROMを配り始めると、子どもたちは、2人一組になっている自分のコンピュータの席へと散っていく。全員がCD-ROMをセットし終えたところで、先生は再び子どもたちを中央に呼び集めた。
「は〜い、CD-ROMを入れたら集まりま〜す」
先生は、再びモニターに注目させる。
「はい、本棚が出ます。今日は…」
「ひきざんビンゴ!」
先生の声より早く子どもたちの声が響く。
「はい、ひきざんビンゴです。ひきざんビンゴの本を出しましょう。そうしたら机に戻ります。次は、本をあけなくちゃね。ビンゴの1のところをあけます」
「あっ前と同じ、たしざんビンゴと同じだ!」
前に学習したたしざんビンゴの画面と比べているのだ。
「それでは黄色と青に分かれて練習してみます。どこから分かれようかな〜?」
先生は、はしゃぐ子どもたちを2つのチームに分けた。そして、それぞれのチームからひとりずつを指名し、ジャンケンで先攻を決めさせた。
「今日は、数字を入れますから、右側の数字のキーを使いますね」
先生は、キーボードが書かれた大きな画用紙を見せて、説明をしながらビンゴを進める。
「さあ、どの数のリンゴを消したいですか?」
先生は、黄色のチームから子どもを指名した。
「7」
子どもの声に合わせて、その数にマウスを合わせる。
「7を作るためには、8から何をひいたらいいですか?」
「1」
黄色のチームの子どもが一斉に答える。
「では、1と入れますね。そして、この曲がった矢印のキー『エンターキー』を押します。はい消えた!次は、青。どの数のリンゴを消したいですか?」
先生のリードに合わせて、ビンゴが進んでいく。4つ並べるのとは関係ない数を消したりしながら、最後に青が4つ並んだ。
「やった!」
「青の勝ち!」
青のチームの子どもはおおはしゃぎだ。
「こういうふうに4つ並ぶとビンゴになるんだね。みんなもがんばってみましょう」
先生の声がかかると、子どもたちは待ちきれないように自分の席に走っていった。
ひきざんビンゴで対戦だ <個人追求1・10分>
- 背の順に男女1人ずつが一組になっている。
 
「ジャンケンポン!」
あちらこちらで対戦が始まる。
「どの数を消したいの?」
「この数だから…14−3で11になるかな」
「6にするためには…1、2、3、…」
一桁のひき算やくりさがりのないひき算はスムーズだが、くりさがりがあると、指をおって数えたりする子どももいる。
「あれ?たし算と間違えちゃった」
思った数を消せなかった子ども。
「この数は作れないよ〜、あとここだけなのに〜」
どうやら、12を消したかったのに、11−?という式が出てしまったようだ。
「勝った〜!」
「あ〜あ、負けちゃった。さ、次の勝負をやろう!」
どんどん次のゲームが進んでいく。
うまくビンゴにするにはどうすればいいかな <集団追求・10分>
- 「途中だけど、ちょっと集まってきてくださ〜い」
先生の声がかかった。子どもたちは、教室の真ん中に集合する。
「みんなは何回くらい勝ったかな?2回勝った人?」
「3回勝った人は?」
先生の声に子どもたちが手を挙げる。
「1回も勝たなかった人は?」
何人かの手が挙がった。
「1回も勝たなかった人のために、どうやったら勝てるのかを考えてみようよ。
どんなところを工夫すればいいんだろう?」
「自分のはそろえて、他の人のはそろわないようにする」
「自分のところばかりを見ないで、相手の人のを見ておいて、相手がビンゴにならないところを入れる」
「相手があと1つでそろうというときに、その数にならないようにする」
「そうね。それでは、今までのことに気をつけて、一度みんなでやってみようか」
先生が代表の2人を指名し、2つのチームに分けた。
「14を消したいから4を入れます」
ビンゴが進んでいく。
「13を消したいから1」
「あれ?ちがうところへ行っちゃったよ!」
ひき算とたし算を勘違いしてしまったようだ。11が消えている。
相手チームに有利になった。
「あっ、ひけない…!」
ひけない数が出て、次に数を入れるチームが王手をかけた。ビンゴになるところが2ヵ所あるようだ。
「6を入れる」
「あっ、引き分けだ〜!」
両方のチームから同時に声があがった。偶然引き分けになったのだ。
「2人ともとても強かったし、みんなもいろいろ知恵を出してくれたね。みんなの知恵を頭に入れながら、今度はお相手さんを変えてやってみましょう。
ジャンケンをして勝った人は今の席に残って、負けた人は先生のところに来てください」
ジャンケンに負けて前に来た子どもたちを、先生は一人ずつどの席に行くかを割り振った。
今度はたくさん勝てるかな <個人追求2・10分>
- 再びビンゴが始まった。さっきとは違う友だちと、楽しそうにビンゴを進めている。
「あっダブルビンゴだ!」
次々に結果を知らせる軽快な音楽が響いた。
「よし、もう一度!」
子どもたちは、何度も何度もビンゴを繰り返す。
「どの数を消したいの?」
「友だちが言った数に続けていけばいいんだよ」
なかなか数を入力できない友だちに、先生のように教えてあげている子どももいる。
今日はうまくできたかな <まとめ・5分>
- 「きりがついたら終わりにしてくださ〜い!」
先生の声が響いた。子どもたちは手慣れた様子でコンピュータを終了させた。
最後にもう一度前に集合する。
「はい、2回目の対戦相手の人とどんな結果だったかな?何回勝った?」
勝った回数を聞く先生の問いに、子どもたちの手が挙がる。
そして、先生は子どもたちを注目させた。
「先生の方を見てください。1回目より2回目の方が自分が思ったところを消せましたか」
「消せた〜!」
「たしざんビンゴのときはビンゴのやり方がわからなかった人もいたけど、今度はわかった?」
「わかった〜!」
「おしいところでビンゴにならなかった人もいるけど、今度、またがんばってください。次は、また対戦相手を変えてやってみましょうね」
先生の声に歓声があがり、子どもたちはコンピュータ教室を後にしていった。
単にひき算の練習をするのではなく、友だちと対戦しながら自分で工夫したり、時にはわからないところを教え合って取り組んだことで、子どもの意欲が高まりました。また、先生が集団追求の形で、授業の最初に子どもたちに課題をしっかり伝えたこと、途中で工夫したやり方を話し合わせたことが、単に計算ゲームをやって終わりではなく、授業の最後の「自分たちが思ったところを消せるようになった」という子どもたちの声につながったと思います。
授業を終えて

石井美智子教諭へのインタビュー
コンピュータを始めたのは、2年くらい前。それまではほとんど触れたことがなかったが、もともと機械を触ることが好きだったため、自然と授業でも使うようになった。「でも、わからないことばかりなんです。わからないことが起こったときには、素直に、子どもたちにわからないって言っちゃうんです」コンピュータに対して、構えずに自然体で授業をおこなっている姿勢がとても印象的だ。
Q
ひきざんビンゴは1年生の教材ですが、2年生で使ったのは、どのような意図があったのでしょうか。
A
ひきざんビンゴは、ビンゴのルールが入ったりすることで普通のひき算より少し高度なので、2年生の初めくらいでちょうどよい気がしました。まだ指を使って計算する子どももおり、もう少し定着させる必要があると思っています。単に筆算のプリントをするより、特に算数の苦手な子どもがゲームのように楽しく取り組めるようです。2人で協力してできたり、個々に応じてできたりすることが合っているのでしょう。
Q
授業の最後に「今度は別の相手と対戦しましょう」とおっしゃっていましたが、この後の授業展開の予定を教えてください。
A
この計算の練習の後に文章問題をします。文章問題をやっていきながら、子どもたちに自分の計算能力が高まってきたのかを考えてもらって、それからもう一度ひきざんビンゴをする予定です。自分が前よりわかるようになった、勝てるようになった、計算が速くなったなど、前より変わってきたことに気がつき、計算する力がついたことを実感できるようにしていきたいと思います。
Q
コンピュータを始めてからまだ2年ということですが、コンピュータを授業に取り入れることに不安はありませんでしたか。
A
画面などでわからないことがあった場合も、子どもたちといっしょに勉強していくつもりで、わからないことはわからないと素直に言ってしまうのです。大人だと、「どうしたらいいのかしら」と考えこんでしまうことでも、子どもはどんどん触っていろいろなことを発見していきます。新しいことを見つけられた方が面白い、というように考えて取り組んでいます。他に詳しい先生もいらっしゃるので、いざとなればヘルプしていただけるという安心感もあるのでしょうね。

(先生からひと言)
最初に集めたときはビンゴの方法を説明しましたが、まだ十分ではないと思っていました。ただ、1回経験をしないと工夫するところなどが実感できないので、2回目に集めたときにそこを押さえるようにしました。
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(先生からひと言)
同じ対戦相手でずっとやっていると、相手に能力がわかってしまうので、勝つか負けるかが決まってしまいます。2回目の組み合わせは、計算能力が合う子ども同士を組み合わせてレベルを合わせました。その方がゲームをするときに勝ったり負けたりするので、楽しいと思いました。
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(解説)
学級の人数の関係で、一組だけ3人でビンゴをする子どもたちがいました。2人だと対戦に熱中してしまいますが、対戦していない1人は中立の立場で見ることができます。他の2人に対して意見を言ったりするなど、いろいろ考えながら取り組むという面では、3人一組でも効果があると思われました。
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(解説)
2回目は、ビンゴで工夫するところもわかり、計算能力も合う同士の対戦で、子どもたちも初めの対戦より意欲的に取り組んでいるように見えました。
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(子どもたちの声)
●1回も勝っていない友だちがいたから、少し教えてあげた。
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自分はひき算が得意だけど、相手の人が得意じゃなかったから手加減してあげたりした。
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あと一つでビンゴのときにひけないときがあるけど、それが面白い。
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2人でやるから、負けたり勝ったり引き分けだったりすることや、そのときの音楽が楽しい。
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