| Multi Book授業実践レポート
教室にマルチブックがやってきた
| 東京都板橋区立上板橋小学校
全校児童273名。各学年1〜2学級の小規模校。平成7年にコンピュータ教室が整備。Windows95が動作するコンピュータが11台。ネットワーク有。プロジェクター、スキャナ、MO、デジタルカメラ、カラープリンタ有。現在、各学級週1時限がコンピュータ教室での授業に割り当てられている。すべての先生がコンピュータを使えるようにしていきたいと、コンピュータ教育への取り組みは積極的。
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「小学校2年生国語」
〜先生の「ちょっと」した工夫が授業を活性化する
「宝くじ」をきっかけに集めた『はんたいことば』で学び合う〜
◆実践日 1998年6月4日(木)
◆学級の人数 21名(男12人、女9人)
利用したソフト:
マルチブック小学校2年[国語]
『はんたいことば』
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反意語に興味を持たせ、語彙を増やすことをねらいとしたソフト。反意語を入力すると、カードがねじれ、どちらか一方のことばが見えなくなる。クリックすることで交互に反意語を見ることができる。
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●本時の位置づけ
2年生になってたまたま反意語にふれる機会があり、子どもたちがとても興味を示したので取り上げてみました。言語事項としてきちんと指導するのは今回が初めてです。●本時の目標
できるだけ多くの反意語を集められることが本時の第一の目標です。子どもが入力したことばによりますが、反意語は「〜ない」であらわさないことや反意語がひとつとは限らない場合があることなどを、その後の授業で押さえていく予定です。
●コンピュータ活用の目的・意図
普通の授業では、カードの表と裏を使うと思いますが、コンピュータのカードは、ねじれるというところが反意語のイメージに近いと思いました。カードがねじれるというだけで、子どもたちの興味・関心が高まります。
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ねじれるカードに「はんたいことば」を入力しよう <導
入・5分>
- 「スイッチ、オン」
先生の大きな声が教室中に響きわたり、子どもたちは一斉にコンピュータの電源を入れた。
コンピュータが起ち上がると先生は、先生のコンピュータ画面を子どもたちのコンピュータに転送した。
「今日はね、この『はんたいことば』というのをやります」
子どもたちのコンピュータに、教材画面を映し出しながら、先生が続けた。
「まっ白なカードがありますね。このカードに反対ことばを入れます。まず上に『あつい』を入れます。」
「あついの反対は何ですか」
「さむい」
「それでは、今度は下に『さむい』を入れます。両方入力したら、このボタンを押したままとなりに持っていって離します」
先生がカードを左側の枠の中に移動させると、カードはくるっと中央でねじれ、下に入力したことばが見えなくなった。
「あれっ、ねじれちゃった」
子どもたちから歓声があがる。
「あついの反対なんだっけ」
そう言って、先生はカードのボタンをクリックして見せた。クリックするたびにカードが回転し、反対ことばが交互に表示される。子どもたちの目はカードに釘付けになった。
「もうひとつやります。『うえ』の反対は何ですか」
「した」
「それではみんなもやってみましょう」
「はんたいことば」をたくさん集めよう <個人追求1・20分>
- 子どもたちは、待ってましたとばかりにマルチブックのCD-ROMを入れて、教材を起ち上げた。

コンピュータは2人に1台。子どもたちはお互いに相談しながら、キーボードから入力したい文字をさがしている。
「あかるいの反対は、くらいだよね」
「みぎとひだりにしよう」
反対ことばをさがす子どもたちの声にまじって、ときおり
「先生、できた!」
といううれしそうな声が聞こえてくる。
子どもたちの画面には、
「おおきい−ちいさい」
「たかい−ひくい」
「へや−そと」といった、思い思いの反対ことばが入力されている。
しばらくすると入力する手が止まっている子どもたちが出始めた。すると、先生が短冊のようなカードの束を取り出して言った。
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「はい、どうぞ1枚引いてください。これの反対は何かな」
ひとりの子どもが「はやい」と書かれたカードを引いた。
「はやいの反対は」と、先生。
「おそい」
カードには、それぞれ違うことばがひとつずつ書かれている。
子どもたちは、自分が引いたカードのことばをヒントに、その反対ことばを考えることになった。
このカードをきっかけに、子どもたちの活動が活発化した。先生は忙しそうに子どもたちの間を動きまわっている。
「先生、宝くじ引かせて」
先生を呼ぶ大きな声が、教室中に響きわたる。
いつの間にかカードは、子どもたちから「宝くじ」
と呼ばれるようになっていた。
「はい、1枚引いて。何が出てくるかな」
男の子が「たつ」と書かれたカードを引いた。
「はい、では立ってみてください」
先生は、実際に子どもを立たせてみた。
「立つの反対は何ですか」
「すわる」
そういいながら、男の子は腰をおろした。
今度は、女の子が「わらう」と書かれたカードを引いた。
「○○ちゃんが、わらう」
先生はそう言って、笑顔をつくってみせた。
「反対は、○○ちゃんが…」
今度は、頬をプウーとふくらませ、怒った表情をつくってみせる。
「おこる」
女の子から元気 な答えが返ってきた。
子どもたちのコンピュータ画面には、次々と反対ことばが書き加えられていった。
お店の人とお客さんに分かれよう <個人追求2・10分>
- 子どもたちが10個ほど反対ことばを作ったところで、先生が言った。
「いくつできましたか。せっかく作ってもらったから、友だちのも見てみたいと思います」
そう言って先生は、これからやる「あてっこクイズ」の説明をした。
「2人のうち、ひとりがお店の人になって、もうひとりはお客さんになってください。お客さんには、お店をまわって反対ことばをあててもらいます。お店の人は、お客さんに反対ことばを聞いてあげてください」
子どもたちは早速役割を決め、お客さんになった子どもは、それぞれの「店」をまわり始めた。

「おいしいの反対はなんだ」と、お店の子ども。
「おいしくない」と、お客さん。
「ブー」
お客さんになった子どもは、納得のいかない表情でカードをクリックする。
「おいしいの反対はまずいでした」
途中で役割を交代しながら、しばらく子どもたちのやり取りが続く。
「わらうの反対は何ですか」と、女の子のお店やさん。
「わらわない」
「ちがいます」
「それじゃあ、おこるかな」
「なくでした」
「え〜、だって、おこるの反対はわらうだと思うけど」
今度は、男の子のお店やさん。
「まるの反対はなんだ」
「しかく」
「ちがいます。まるの反対はばつでした」
「どうして」
「だって、テストであっていれば○だし、まちがっていれば×でしょう」
きちんと理由を説明してくれるお店やさんもあった。
どういうのが「はんたいことば」かな <集団追求・10分>
- 「はい、ではみんな自分の席にもどってください」
黒板を指しながら、先生が言った。
「うしろの反対は何ですか」
「まえ」
先生は、「うしろ」の下に「まえ」と板書した。
「さむいの反対は」
「あつい」
「いくの反対は」
「いかない」
「いかないかな? 学校にいく。学校から…」
先生がそう言うと、すぐに子どもたちから正しい答えが返ってきた。
「かえる」
「そう、こういう『ない』をつけたことばじゃないものが反対ことばです」
そう言って先生は反対ことばの説明をした。
「そうすると、わらうの反対はわらわないじゃなくて、何にすればいいかな」
「なく」 「おこる」
「そうですね。こういうのが反対ことばです」
残り時間も少なくなってきた。
「もっとやりたいよね」と、先生。
「もっとやりたい」と、子どもたち。
「もっとやりたいけど時間がないから、今日はこれをこのフロッピーにとっておきます」
そう言って、先生はフロッピーディスクへのデータの保存のしかたを説明した。
データを保存する。初めて経験する作業にも、子どもたちは何の戸惑いもない。
カチカチという音を立てながら子どもたちの作品が保存された。
反意語を入力する。入力された反意語を交互に表示する。教材ソフトにはたったそれだけの機能しかありません。しかし、「宝くじを引く」や「お店とお客になって友だちの作ったことばを見る」といった工夫が、子どもたちのやる気を高め、発想や視野を広げることにつながりました。
先生の授業を見ていて、コンピュータを使った授業だからといって何も特殊な工夫は必要なく、むしろ従来の授業と同じように子どもたちをどのように動機づけ、指導していくかが大切と感じました。
授業を終えて

園川 伸子教諭へのインタビュー
コンピュータを始めたのは、同校にコンピュータ教室が整備されてからとのこと。「コンピュータを使った授業といっても、めずらしいことをやっているわけではないんです」そんな気負いのなさが、コンピュータを使った授業の新しい可能性を広げているのかもしれない。「コンピュータの時間は、子どもたちが一番楽しみにしている時間なので、やらないわけにはいかないんです」
Q
子どもたちがお店の人やお客さんになって、反意語をあてっこするというのは、とても面白い試みでしたね。ねらい通りの授業ができましたか?
A
そうですね。「やすい」と「たかい」の組み合わせで、「たかい」のほうが見えているカードを見て、「ひくい」と答えた子どもがいたんです。でも、そのカードの答えは「やすい」だったんですね。
子どもたちは友だちが作った反意語を見ることで、ひとつのことばに対して複数の反意語があることに気づくことができたと思います。
Q
今日は子どもたちにデータを保存させましたが、次の時間ではそれをどのように活用される予定ですか。
A
今日は「ない」がつかないことばが反意語だということを押さえましたから、まず、自分が入力したことばで「ない」がついているものを直させてみようと思います。その後、またもう少し反意語を作らせてから、今日と同じように友だちが作ったものを見合う予定です。
次時の課題としては、同じ「高い」でも「安い」と「低い」といった違った意味の反意語があることや、「笑う」に対し「泣く」「怒る」のように反意語がひとつとは限らないものがあること、漢字で書くと限定されることなどを押さえていきたいと思っています。
Q
今後、授業のどのような場面でコンピュータを活かしていきたいとお考えですか。
A
ネットワークを駆使して、いろいろなことをやってみたいですね。今日の授業でも、ネットワークを使うことで、友だちのやったことを全員で確認するといったことが可能になります。
また、私自身がコンピュータの使い方を勉強することで、写真を取り込んだ作品を作ったりと、可能性がもっともっと広がると思っています。
今は、自分のできる範囲をひとつずつ増やしているところです。

(先生からひと言)
このカードは、ヒントカードとして、子どもたちから反意語があまり出てこなかった場合に使おうと思い用意しました。
「けんかする」「わらう」「いく」「ふとる」「右」「いり口」「きれい」「かたい」「おいしい」など、子どもの生活に身近な動詞、名詞、形容詞を集めました。
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(先生からひと言)
生活体験の違いで、わからない子どももいるだろうと思っていたので、思いつかない子どもには、ジェスチャーを入れたり、前後の文を作ってやることでイメージをふくらませてあげました。たいていの子どもは、それでわかりました。
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(先生からひと言)
実にさまざまなことばが出てきました。「まる」ならわかるけど、「まるい」だと「さんかく」なのか「しかく」なのかわからないという子どももいて、それなら「まる」で考えてみてとアドバイスしました。
今日の授業では、あえてあいまいな部分はそのままにして、例えば「けんかしない」のように「ない」をつけたことばではなく、「なかなおりする」「あやまる」といったイメージの反意語が出てくればよいと思って指導しました。
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(子どもたちの声)
●どんなことばが出てくるのか、くじを引くのがとても楽しみだった。
●くじを引いて、自分で反対ことばを考えるのが楽しかった。
●お客さんやお店の人になって、友だちとクイズを出し合ったのが楽しかった。
●「まる」の反対がむずかしかった。「しかく」だと思っていたら「ばつ」だといわれてびっくりした。
●フロッピーに保存したのは初めてだったので、続きをやるのが楽しみ。
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