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学校全体でのお取り組み事例

国語辞典に親しみながら、語彙を増やし、言語感覚を磨かれている事例

2012年9月取材

町田市立鶴川第二中学校 白石典子先生の授業実践

●学校概要
東京都町田市(人口約42.5万人)の中学校。
生徒数は各学年約260名で、学級数は各学年7学級。
●お取り組み学年
1年生(国語辞典)
●お取り組み単元
言葉と出会おう!! あの人は~だ(オリジナル単元)
●指導者
白石 典子 先生


白石 典子 先生

実践の概要

<指導案>で詳細を見る

辞書に親しみ、楽しみながら語彙を増やしていく活動。「あの人は○○人だ」という文の、○○に当てはまることばを辞書を引きながら探していく。
学級全体を9つのグループに分け、「あ・い」で始まることばを見つける班、「う・え・お」で始まることばを見つける班、のようにグループごとに担当する音をあらかじめ振り分けておく。
最初は個人で辞書を引いて、見つけたことばをふせんに書き出しておき、その後、グループ内で発表して、そのことばが文に適したことばかどうかを確認する。
適切に当てはまることばで、他の人が見つけていない語を探せた生徒には「オンリーワン賞」の称号を与える。
最後に、各グループで見つけたおすすめのことばをカードに書き出し、黒板に掲示する。

【導入】
プリントを配布し、学習のねらい・手順などを説明する。グループ分けを行う。
【展開】
グループに分かれ、辞書を引いて、文に当てはまることばを見つける。見つけたことばはグループ内で適切かどうかを検討し、おすすめのことばをカードに書き出す。
【まとめ】
授業の感想を聞く。

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授業実践後の手ごたえ

■辞書を引くことへの興味を引き出せたのは大きな収穫

生徒たちは予想以上に生き生きと授業に取り組んでいた。ことばを探すときには集中し、グループ学習の時には楽しそうに盛り上がったり、ことばについて真剣に考えたりしていた。
授業後のアンケートでは95%以上の生徒が「楽しかった」「どちらかといえば楽しかった」と答えた。さらに、辞書をこれからもっと使おうという気持ちになった生徒がたくさんいたのが大きな収穫である。

■集めたことばを振り返ることで、語彙獲得への意欲が増した

また、生徒たちの選んだことばを整理し、一覧(国語教室通信16号)にして授業で読み合ったところ、教室の中にざわめきが広がり、その後し~んとなって読みふけっていた。くすくす笑いながら読んだり、知らないことばばかりだと焦ったり、早速辞書で調べ出したり・・・と反応は様々だったが、こんなことばも入るのかという驚きで、語彙を増やすことへの意欲や、辞書への興味がいっそう増したようであった。

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授業実践を終えての課題

■今後は「品詞学習」につなげることも

生徒たちからはもっと時間がほしかったという感想が出された。もっと調べたいし、話し合いたいということである。2時間扱いにしてもよいが、辞書に親しむことを一番の狙いとするなら、1時間扱いにして、お互いの学習成果を共有する時間を後で確保するのが良いと思われる。
また、1年生は文法で品詞を学習していないため、形容詞、形容動詞、名詞といったことばを使えない。そのため、説明が難しいところがあった。2年生くらいの実施だと、品詞を意識した学習にすることができる。逆に1年生はこの学習を後の品詞学習に生かすこともできると感じた。

■不適なことばへの注意も必要

日本語としておかしいもの、ふさわしくないものもたくさん出された。最後に生徒たちの集めたことばを一覧にする際、そのことに触れる必要がある。
また、今回は「あの人は~人だ」の「人」はあってもなくてもよいとした。その方がたくさんことばを収集できるからだ。ただ、人名、国名、職業名、病名は除くなどと一定の制限を付けないと、生徒の発想はこちらの予想をはるかに超えてしまう。

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今後の展望

■辞書学習の可能性を感じ、新しい授業の開発へ

辞書を使ってこのような学習を生き生きとできることは私にとっても驚きであった。「このような学習をもっとしてほしい」「またやりたい」という生徒の感想に応えたいと思う。「“言葉と出会う”ことはこんなに楽しかったんだ、と改めて感じた」と感想に書いた生徒もいた。 辞書学習の楽しさと可能性を感じ、これからも辞書をメインにした授業を開発していきたいと思った。

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生徒アンケートより、授業の感想の抜粋

  • 普段はしない、とても楽しい辞書が好きになる授業でおもしろかったです。辞書は、難しくて、少し使いにくいイメージがあったのですが、辞書は言葉の使い方、漢字のよみ以外にも、さまざまな使いかたがあることに驚きました。もっと活用したいです。
  • 今回の授業で、さまざまな言葉の使い方がわかり、また、この言葉を普段の生活でも使っていこうと思いました。楽しみながら覚えられるところが良いと思いました。
  • ふだんは言葉の意味や漢字表記、漢子の使い分けに使っていたけれど、授業を受けてこんなことにも使えるんだあと思い、とても楽しかったです。
  • 辞書を引く楽しさや、たくさんの言葉を調べることの楽しさを学びました。また、知らない言葉もあり、みんなが知らべたことに、「その言葉は思いつかなかったな」「他にはどんな言葉があるのかな、もっと調べたい」と思い、興味を持ちました。
  • 辞典で調べることはめんどくさいなと思っていたけど今回の授業を通してもっとたくさんの言葉を調べてみたいなと思った。

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授業見学レポート(辞典編集部より)

授業は大変な盛り上がりで、中学生がここまで楽しそうに辞書を引くのか、と正直驚きました。割り振られたことばのはじめの音は同じでも、生徒によってどのことばを抜き出すか、個性が出ていたのも面白かったです。(ですので、オンリーワン賞もたくさん出ていました。)
授業の中で、ある男子生徒が「あこぎ」ということばをふせんに書き出していましたが、同じグループの女子生徒に「それどういう意味?」と聞かれて即答できず、もう一度辞書を引いて語釈を読み上げている姿が印象的でした。ゲーム感覚の盛り上がりのなかに、こうした辞書本来の使い方が自然になされているという点でも、非常に優れたご実践だと感じました。

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今回の授業事例について


田中 洋一 先生
東京女子体育大学教授

辞書は意味の分からないことばを調べるときだけでなく、自分の表現に使う語を探すときにも役立ちます。白石先生の授業では、修飾語になることばを探させ、自分のイメージに合った語を選ばせています。このような取り組みは生徒の語彙を豊かにし、言語感覚を鋭くします。語彙が豊かになると、作文やスピーチなどの表現活動が得意になり、国語が好きになります。また情操も育ちます。国語科の充実させたい分野の一つです。

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