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和英辞典を使ったお取り組み事例

生徒の「伝えたい気持ち」を大切にする英語のトレーニングで
使える英語を身につける事例

2009年2月取材
(中学校での指導時の事例)

田尻悟郎先生(関西大学)の授業実践

指導のポイント

自己表現活動の大切さ
  1. 1.生徒は自己表現活動をすることで,単語テストよりも語や表現を身につける
  2. 2.自己表現をさせると,生徒の発想の豊かさと生徒のミスが見えると同時に,教師の教え方のミスも見えてくる
和英辞典を使った自己表現活動
  1. 1.和英辞典を使うために一番大切なことは,語順を知っていること
  2. 2.自己表現のための5ステップ


田尻 悟郎 先生

自己表現活動の大切さ

■生徒は自己表現活動をすることで,単語テストよりも語や表現を身につける

自己表現活動は非常に重要。言いたいことを表現することにより,生徒は単語テストよりも語や表現を身につける。インプットだけでは生徒は習ったことを忘れてしまう。アウトプットさせることで定着が深まる。自己表現は方法さえ分かれば難しくはない。もちろん,高度なことをやろうとすると難しいが,意思を通じさせるということは,中学校でもじゅうぶんできる。また,ライティングは4技能の中で最も顕著に伸びが感じられる技能でもある。

3年間で行う自己表現活動の例

  • ・自作スキット
  • ・プラスワン表現(パターン・プラクティス発展など)
  • ・インタビューテスト(Q&A,架空人物,架空状況)
  • ・感想(教科書,歌,映画など)
  • ・ディベート(給食か弁当か,都会か田舎か,制服か私服かなど)
  • ・説明文1(買い物,道案内,電話)
  • ・説明文2(家族紹介,学校案内,学校紹介,修学旅行新聞,職場体験実習の感想など)
  • ・説明文3(日本的事物の説明,definitions)
  • ・英詩
  • ・創作文(なりきり作文,たられば連想ゲーム,物語の続きを書くなど)
  • ・エッセイ(私の理想像,私のギネスブックなど)
  • ・スピーチ(Show and Tell,My Dreamなど)
■自己表現をさせると,生徒の発想の豊かさと生徒のミスが見えると同時に,教師の教え方のミスも見えてくる

生徒の作文を見ると,生徒の発想の豊かさに感心すると同時に,普段の授業では見えなかった生徒の間違いに気づき,何がわかっていないのかが見えてくる。たとえば,「東京の人」をTokyo’s peopleとしてしまう,「私たちは次の月曜日が楽しみです」をWe are pleasure next Sunday.としてしまう,などがあった。生徒のアウトプットを見ることでこういう生徒のミスに気づくことができる。
また,教師の教え方のミスも見える。たとえば,canを「できる」と教えていたところ,友達紹介の作文で,He can math.「彼は数学ができます」と書いた生徒がいた。「鯉のぼり」を英語で定義しているときに,If I can a baby boy, I will buy one.「もし男の子ができたら,(鯉のぼりを)ひとつ買います」と書いた生徒もいた。そこで,canを「できる」と教えると,こういう間違いが出てくるということに気づいた。その後,canは「できる」ではなく「何々することができる」と教えるように変えた。

■家庭学習用に2つのノートを用意

自学帳:家庭学習を自分で行うためのノート。『Talk & Talk』(正進社)の中で,授業で取り上げなかったものを自分で行うなど。
自己表現ノート:自己表現活動のアウトプットからいいものを清書し取っておくもの。

《自学帳》ある生徒さんの2年生と3年生のときの自学帳


【2年4月】辞書を引いているが,まだ単語をただ並べている状態の部分もある。


【2年4月】語順の指導を受け,この日以外も,語順について何度も練習。


【3年2月】3年生になって,語順を身につけ,自分の気持ちを表現することに集中している。

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和英辞典を使った自己表現活動


《枝分かれ図》
『Challenge 中学和英辞典』別冊付録「Challenge 英作文ガイド」(田尻悟郎著)より

■和英辞典を使うために一番大切なことは,語順を知っていること

和英辞典を使うために一番大切なことは,語順(文の構成)を知っていること。自分は英文を (1)一般動詞が入る文,(2)be動詞が入る文とその他のS+V+Cの文,(3)存在を表す文の3グループに大別し,さらにそれを12の語順に分けて教えている。和英辞典を使わせるのは,語順を知った上で文を構成する“要素”の表現がわからないとき。語順を押さえないと和英辞典は機能しない。

■自己表現のための5ステップ
  1. ①言いたいこと全体について枝分かれ図を作り,頭の中を整理する。
  2. ②それぞれの項目(枝分かれ図の四角で囲んだ部分)の内容を英語にした場合,語順一覧表の3つの語順グループのどれに入るか考えて,(1) (2) (3)の番号を書く。
    例:最初法隆寺を訪れた(語順グループ(1))
      最古の木造建築(語順グループ(2))
  3. ③それぞれの項目の内容をセンスグループに分け,②で選んだ語順グループの語順のどれかに日本語を当てはめていく(=英語の語順に並べる)。この段階ではまだ日本語でよい。当てはめていくと同時に,どの語順(1-A, 2-Aなど)を使ったらよいかが決まってくる。

  4. ④語順の各要素について知っている表現で使えるものはないか探し,英語にする。その際,すぐに和英を引かずに,今まで習った表現をフル活用する。
    例:私たちは 訪れた 法隆寺を 最初(We visited Horyuji first.)
  5. ⑤わからない部分を和英辞典で調べる。
    例:「木造建築」がわからないので和英辞典で調べる(wooden building)
■和英辞典は訳語だけではなく,用例を見させる

和英辞典の訳語が,そのまま生徒の言いたいことの英語表現とは限らない。たとえば,生徒達が日記を書くときに非常によく使うことばとして「がんばる」がある。「総合体育大会だからがんばる」「テストだからがんばる」など。和英辞典を見ると,訳語はhold outとなっていることが多い(特にひと昔前のもの)。しかし,hold outは「持ちこたえる」という意味で,「総合体育大会だからがんばる」「テストだからがんばる」などには使えない。用例を読めば,try [work] hardやdo one’s bestなどがのっている。

■和英辞典と勝負させる

和英辞典を引かせる前に,自分で考えさせ,自分の表現と辞典の表現をくらべる(=辞書と勝負させる)こともよい。自分で英語を考えてから辞典と勝負すると,生徒は「うまいなー,辞書は」と辞典の表現に感心する。そして,面白がって和英辞典を読むようになっていく。

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